修行
未来のために書いておこう
お帰り
家に帰った
《修行だよ、全員集合!》
Nが腕を上げて一人で盛り上がる
既に集合している
黙っていたら咳払いして
《さて、今回は魔法を3つ覚えてもらう》
何事もなかったのように始めた
《さて松村君、君の予想では私は何を教えると思う?》
まず、初級の単発攻撃魔法
次に身体強化
あと1つは魔力感知かな?
《正解!》
Nが頭の中でくす玉を割る
頭の中だからって自由だな
《では早速攻撃魔法からいってみよう》
いってみようっていうけど攻撃魔法なら人がいないところが良いのでは?
《まず腕立て100回!》
ハ?
腕立て100回?
なんで?
《修行で腕力が必要だから》
いや、攻撃魔法と腕立てが結びつかないんだけど
《十分間腕を上げっぱなしに出来るほどの腕力あるの?》
************
「さっき教えた攻撃魔法はちゃんと覚えている?」
師匠となったNさんは10m離れたところで的を作っていた。さっき教わったのは対人初級氷魔法だ
名前はない
だけど判断しにくいから勝手に
「名前をつけるならスノーにしなさい」
スノーにした
スノーは細かい氷を作り出してそれを纏めて放つ
雪玉のようなものだと教わった
「はい」
「じゃあ片腕を上げて」
右腕を上げた
「真っ直ぐ腕を伸ばして、手のひらは的に、初めてだからリラックスできるように足を開いて」
Nさんが文字通り手取り足取り指導する
「よし」
体は大丈夫だと判断したNさんが一歩下がって
「撃てえぇぇぇぇい!」
号令とともに私は教わった魔法を腕を通して発動する
ぽしゅ
と音がして親指ほどの雪玉が放たれて二メートルほどで地面に落ちた
情けない音に恥ずかしくなる私
笑っちゃいけないと思っているのか顔をそらして必死に耐えているNさん
太ももを抓ってこらえ切ってから
「よし、ひたすら撃ちまくれ! とりあえず十分は腕を下ろすな!」
こうして地獄の修行が始まった
************
……今のは
《ルナフの記憶ね、私との修行を思い出したんだと思うよ》
確か、翌日腕が上がらないほどの筋肉痛に見舞われるんだ
《さ〜て松村君?》
意識をNの方に戻すと満面の笑みで
《修行をしよう》
************
やあ
Nの七日間修行へようこそ
七日間君たちの教官であるNだ
ここでは気軽にNと呼んでもらって構わない
早速だが君たちはここで死んでもらう
間違えた、死体になってもらう
死体になってからが修行の本番だ
それまではただのお遊びだ
安心したまえ、比喩だ
では早速始めていこうと思うがここで注意点
やる気のないやつは失せろ
君たちが本気でやらないとただの虐待になるからね
ルナフもやる気がないなら帰ってもいい
いい?
では始めよう
ではまず基本的なこと、この修行を始める準備段階だ
とりあえず腕立てをゆっくり10回だ
言い忘れたが、これは魔法使いの修行ではなく戦士の修行だ。当然肉体的な修行もする
準備はいい?
7カウントで伏せて7カウントで上がるんだ
大丈夫、君ならできる
私も一緒にやる
君一人に辛いことは押し付けないさ
よし、いくよ
一緒に声出して
1,2,3,4,5,6,7
1,2,3,4,5,6,7
よし一度体勢を楽にしてくれ
今のでわかっただろ?
一回でもキツイのが10回ある
まだ始まったばかりだ
こんなの序の口だ
よし続きをしよう
まだまだあるからね腹筋背筋スクワット走り込み懸垂……
*
*
*
*
*
90分における準備時間お疲れ様
では最後に言っておこう
今回行った筋トレは筋肉をつけるためじゃない
体が動けない時、疲れ切っている時に動くために行ったに過ぎない
まあ、多少は筋トレ目的もあるけど
辛い?
辛いよね
一緒にやっている私だって辛い
立ち上がる事すら難しい
疲れたよね
休みたいよね
お風呂入ってサッパリしたいよね
こんな事したくないよね
いいよ
やめたいなら今はやめていいよ
修行なんて放っておいていいんだよ
だけど、必ず戻ってきてね
この修行は君が自分の意思でやってほしい
保障しよう。この七日間修行をやり遂げたとき、君は変わる
どんなに辛い事が起きても諦めない
たとえ心の底から信じていた人が敵になっても
辛くても変わりたいという気持ちがあれば君は変われる
辛い、やめたい、休みたい
そこから一歩踏み出すんだ
その一歩は君を変える一歩だ
もうダメだというときこそチャンスなんだ
君が変われるチャンスなんだ
さあ立ち上がって
私の手を握って
一緒に一歩踏み出そう
よく踏み出した
この一歩を忘れるな
これが君が変わる一歩だ
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