2-8 ×登校 ◯ 吶喊
メンタルブレイクから復活☆
投稿感覚が空いても戻ってくる系の作者、旧天です。
ごめんなさい。去年度全く投稿出来なくて。ちょっとメンタルがぶっ壊れていまして。加えて別件で生死を彷徨っていました。
去年は交通事故に遭ったりして散々だったからな……。
ははは、よく生きてたな私。
今はメンタルブレイクの原因が完全になくなったのと、身体も異常なしなので絶好調です。
よって復活!
正直、メガロ・ハイスクール編はずっと書きたかった章なので、いつもより多めに書くかもしれません。というか書き始めたら止まらなくなりました。これ、1時間半で書きましたからね。
それではどうぞ!
ピリッ
寝ている時、脳内に電流が流れるような感じがして飛び起きる。まるで地震の初期微動が来た時の感覚だ。命の危険を感じた。周囲を見渡すが俺の部屋だ。時刻は午前3時。
誰か敵とかいるわけではない。何か大きな災害が起きたように空気が違う。日常から非日常へと突入したようなもの。ドジョウの大群が現れた時のような感覚。
「……外ですね」
私は雨戸を開けると屋根へ逆上がりの要領で上がった。少し欠けた月に照らされて、随分と明るく見える。息を止めて5感を封じ、魔力感と使徒としてに感覚を研ぎ澄ませる。
「……全方位?」
嫌な予感は全方位からしていた。何か巨大なものがいるが、同じ気配が全方位から漂ってくる。まるで巨大な何かに取り込まれたかのように。
だがそれにしては妙な感覚ですね。全方位と表現したが少し違うし、自分の周囲にある複数の点から、同じ気配がする。面ではなく点で。
「でも、これは招かれていると考えて良さそうですね」
漂う気配は敵意のようなものではなく、威圧感。拒むようなものではなく、来るなら来やがれ! と言っているようなもの。そして行かないと取り返しのつかないものになるだろうという感覚。
「わざわざ居場所を知らせてくれるとは、殊勝な心がけですね」
箒を呼び出し、私は一番近い気配へと向かっていく。眼下に見える街は、夜だと考慮しても静かすぎる。やはりオーバーワールドの制御下に置かれているのだろう。
「……ってアレは」
車すら通っていない道路を、信号無視しながら高速で走るバイクが見えた。暗くてよく分からないが、形状や乗っている人物の服装から容易に特定ができる。
「謎の使徒……少なくともリアルワールドではない」
* *
ルナフが気配を感じ取ったのと同時刻、八葉も同様に気配を感じ取っていた。
「これは……あぁ、そういうことか」
自分に混ざった者からの情報で、その気配がオーバーワールドによるものだと感じとる。相変わらずよくわからない感覚だ。となると心配なのはルナフちゃんだ。
恐らくパンゲアは、リアルワールドに止められているだろう。動けるのが自分だけしかいないのなら、動くしかない。今のルナフちゃんがオーバーワールドの使徒と接敵したら、間違えなく飲み込まれる。
最後の希望を失うわけにはいかない。慌ててルナフに電話をかけるが、ちょうど空を飛んでいて出ることが出来ない。
早着替えして、狐のお面とバイクのヘルメットを手に持つ。スマホを高速で操作し、ユリアに電話をかける。同棲している和也でも良い、誰か出てほしい。
『どうしたの? 八葉ちゃん』
「今夜はお楽しみだった? あ、間違えた」
『どういう間違いよ!』
少し会話を引き伸ばしている間に、駐車場に停めているバイクへとたどり着く。
「もしもし、私メリー、今松村の家の前にいるの」
覚醒者の限界を超えた長距離移動によって、八葉は松村の家の前にバイクと共に立つ。ルナフの部屋を見上げると窓が開いていて、カーテンが風に揺らされている。
「遅かった。因果の脱出に通達、私と松村はオーバーワールド陣営の攻撃に突入する」
「え? 何があったの?」
「状況的に、オーバーワールドが本気出してきた」
* *
「……」
「素直に乗ってくれるのは驚いたよ」
私は今、八葉さんのバイクの後ろに乗っている。ヘルメットは持っていなかったから、魔法障壁で全身を守っている。男だったら女子に抱きついてウハウハしていたかもしれないけど、今はルナフだからしない。
私はルナフ。
「昨日、パンゲアさんが何にも反応しなかったので。だから信じています」
「そう」
「それに、Nさんが言っていたんです。因果の中で、一番信用できるけど信用しちゃダメだって」
「最後のは余計かな? Nが復活したら問いたださないとね」
「単刀直入に伺いますが、何処までNさんのこと知っていましたか?」
八葉さんが少し考えるそぶりを見せる。
「質問が悪かったですね。八葉さんはNさんが使徒だって知っていましたか?」
「……ごまかしは、無理みたいだね」
「その言葉だけで結構です」
私がそう返事をすると、八葉さんはスピードを上げる。目的地は二人とも同じ。オーバーワールド陣営の気配がする点へ。
私が言わなくても、点へと向かっていけるのは、八葉さんが所属不明の使徒であることの証明だ。
「そういえば、Nさんってどういう人でした?」
「私より、作者と弟子の貴方の方が知っていると思うけど?」
「俺は、あくまで作者です。物語で言うところの神さまみたいに俯瞰でしか見ることが出来ません。性格は知っているけど、生きているNは分かりません。そして私は弟子です。Nさんのことを憧れています。だから、綺麗なところしか見えないんです」
「そっか。一言で言うなら怪物だったよ。覚醒者や巻き戻しに気づいている覚醒者の中には、N以上に強力な力を持った人もいた。だけど、その力に心が追いついていなかった。キャラと作者で精神が乖離していて、キャラのスペックを引き出せていなかった。極限状態になると、その差は顕著になる。どんな地獄であろうと、Nは戦い続けた。心が折れずに。だからこそ、オーバーワールドに目をつけられたんだろうね」
「なんか、嬉しいような悲しいような」
「どうして?」
「Nは、Nさんは誰よりも強い。だから奪われてしまったのかと思うと」
ここまでNを強くしなければ、オーバーワールドに目をつけられることはなかっただろう。強すぎる力は身を滅ぼす。
「ルナフちゃんは子どもだね」
「確かにそうですけど、面と向かって言われると」
「だからこそ、伸び代がある。Nを超える存在になれる可能性を秘めている。力も、心も」
「慰めてくれているんですか?」
八葉さんの顔は伺えない。どんな顔をして、そんなことを言っているのか。何を意図して言っているのか。
「ルナフちゃん、貴方にとって私は数少ない味方。私にとっても僅かな味方。お互い、助けあうものでしょ?」
「……ありがとうございます」
「気にしないでね。お互い、オーバーワールドに叛逆する使徒なのだから」
「そういえば、八葉さんって何処の使徒なんですか?」
「分からない」
「……これって信じて良いんですかね?」
「正直者だと思ってほしんだけど」
* *
バイクを高校の正門の前で止めて、二人で学校の敷地内を覗き込む。
「いるね」
「いますね」
気配は校舎全体からしていた。こんばんは死ねという声が聞こえてきそうだ。
「それに、敷地内に何か力場もありますよ」
普通の視覚では分からないが、魔法使いとしての感覚と使徒としての感覚が警鐘を鳴らしている。
「どういうものか分かる? 私は魔法関係はダメなんだけど」
「魔力系ではないですね。特急特異点の力が加わっています」
「下手に足を踏み入れたら、ダメなタイプね」
「使徒化すればいけるかもしれないですけど」
「じゃあしよっか」
話は早かった。ここでウダウダとやっていても埒があかないし、自分達以外に対処できるとは思えない。
「ハロー、ワンダーワールド」
【set: 龍華の侍】
「もしもし、私メリー」
隣を見ると狐面を被り、青いナイフを両手に一本ずつ持った八葉さんが佇んでいた。使徒化したことで特異点の系統が顕著になるが、リアルでもシャングリラでもアンダーでもオーバーでもワンダーでもない。
「本当にわからないんですね。何々ワールドと言わなくても使徒化できるとは」
「戦闘能力は期待しないでね。奇襲攻撃しか出来ないから」
2人で装備を整えると、正門に手をかける。両開きのタイプで、普通なら施錠されているはずだが、今夜はされていない。そもそも南京錠が見当たらない。
「それでは行きます。吶喊!」
「こういうのってもう少し静かに入るものじゃないの?! 困ったら取り敢えず突撃するクセは師匠譲りなの?!」
バンと弾くように門を開き足を踏み入れる。まとわりつく空気が変わり、相手の領域に入ったのだと感じとる。
二歩目を踏もうとすると、体がガクリと落ちる。反射的に足元を見ると、落とし穴のように地面のテクスチャが剥がれ、体が沈んでいく。
「八葉さん捕まって! 叛逆!」
恐らく飛行手段が無いというのをバイク移動の時に聞いていた私は、隣の八葉さんを抱き寄せ重力に叛逆する。
「え、ちょっと……幼女にお姫様抱っこされている」
プカプカと浮かぶ私とは対極に、地面のテクスチャは剥がれ下へと落ちていく。ガチャンと音がして振り向くと、正門が閉じられ、そして消えていく。否、別のものに変わっていっている。
穴の奥から、下から光が等間隔で灯されていく。それはよく見る光だ。
「蛍光灯?」
八葉さんの方が光の正体に先に気づき、つぶやく。その蛍光灯に照らされて穴の中が分かるようになった。
学校の廊下だ。上から下へと向かっていく廊下だ。
蛍光灯が私たちの前で灯されると重力の向きが変わり、今まで下だったのが前に。上だったのが後ろに。
「きゃっ」
「うぐぅ」
突然の重力変動に反応が遅れ、体勢を乱して地面に激突する。
『夜間の行動、及び夜間の許可なき能力使用は校則違反です』
間髪入れずに天井のスピーカーからそう音声が流れると、一番近い蛍光灯から反応できないほどの速さで電撃が放たれた。一瞬で意識を刈り取られ、私は使徒化を解除される。
何かに縛られるような感覚がした。物理的にではなく精神的に。
八葉さんも意識を失ったのか、狐面が飛んでいっている。
意識を失う最後の瞬間に目に入ったのは、小さな看板だった。
『メガロ・ハイスクール 14-151』
今回は二正面作戦です。
ルナフ&八葉
大輔
パンゲア?
リアルワールドに邪魔されていますので。




