2-6 残されたのは4人
いつもありがとうございます。
まだ本調子ではありませんが、本編更新です。
「色々あったよ。座って」
八葉さんが土手に座り、その隣をポンポンと手で叩く。私はその隣に座り、あまり気にしていなかった景色を目に入れた。
大きな川と幾つもの山、空気は澄んでいるのか遠い山まで見ることができる。子どもの頃はよく眺めていた景色だけど、最近は携帯ばかり見ていたからか、懐かしく感じる。
「オーバーワールドについては、聞いた?」
「はい、アリスから軽く説明を。巻き戻しの犯人であると」
「その通り。現状私たちはオーバーワールドを倒すことが目的となっている。この4人で」
「4人で?」
私と、松村と、パンゲアさんと八葉の四人?
私が聞き返すと、八葉さんは真剣な顔で頷き返してくる。時間を巻き戻している相手に4人で立ち向かうなんて無理無茶無謀。
「そもそも、何でこの4人なんです?」
ユリアさんやイカリさんはどうしたの言うのだ。色々あったって言うけど、まさかドッペルゲンガーが成り代わっているの?
「オーバーワールドはね、洗脳することが出来る。この4人以外の人間は全て、オーバーワールドの支配下にある」
「……は?」
「つまり、4対70億」
「は?」
「しかもただ人を相手にするのどころか、軍隊とも相手しなくちゃならないからね」
「え?」
「その軍隊を単騎で上回る使徒が何人もいる」
「それ……無理ゲーですよね」
無双ゲーでも、そこまで戦力差は無い。今まで無双ゲーで倒した敵の累積人数よりも明らかに多い。
「だけど、勝ち筋はある」
「あるんですか?!」
戦力差が圧倒的だと言うのに、勝ち筋が残っているとは思えない。4人のうち二人が使徒だとは言え、敵はさらに多くの使徒を抱えていると思われる。
「ただ……その勝ち筋の一つが」
八葉さんが松村の方に目を向ける。松村はパンゲアさんと会話してコロコロと表情を変えていたが、こちらの視線に気がつくと手を振った。話したのは数回ほどしかなかったが、今までの松村とルナフとはかけ離れた様子だ。
ルナフは年齢の割に大人びていたが、今回は見た目よりも幼い言動になっている。それだけならまだしも、スイッチが入ると一気にキレる。
不定の狂気に陥っているのでは?
「ルナフちゃんはパンゲアに任せよう。だから、もう一人の可能性を探る」
「もう一人の可能性? 誰が?」
私はてっきり、パンゲアさんのことかと思った。リアルワールドの使徒であるから、この中で一番強い。そもそも松村があんなに苦しんでいるなら、もっと強い人に任せれば良い。
「それは貴方だよ。近衛朱莉さん、そしてアリスの弟子にして従兄弟の大輔さん」
「え、無理無理無理無理無理無理無理無理!」
首を激しく横に振り戦うことを拒絶する。たしかに私は戦えるオリキャラに覚醒しているけど、強くないし……主人格である私は戦いが好きじゃない。
そもそも、どうやって戦うの? 私はスーパーとも言えないロボットしか持っていない。作中ではアリスの強化パーツの一つでしかなかった。
そんな俺が、どうやって戦えと言うのだ。
「アリスも最初はそう言っていた」
《言っていたね》
「アリスはどうせ流されただけです!」
俺もそう思う。アリスって作中でも周りに流されるタイプ、操り人形だった。そのアリスが自分の意思で何をするかが物語の大まかな流れだ。
《そうそう。そして自分の意思でスーパーロボット: バリスを動かした》
「そうね、最初はNに流されて戦っていた。でも、Nがいなくなった後、最後の砦として立ち塞がった守護者がアリス。もう覚えているのは私ぐらいだけどね」
覚えているのは私ぐらい。
なんで他の人は覚えていないのか?
洗脳によって記憶を弄られた? 洗脳と記憶改竄は同一のものか不明だが、この四人以外は記憶も改竄されている可能性がある。
では私たち四人が記憶を改竄されなかった理由は?
パンゲアさんは使徒だから。私には内部に使徒のアリスがいるから。となるとルナフの頭にも使徒のNがいた? 今はいなくなってしまったみたいだけど。
じゃあ
八葉さんは?
「八葉さんはどうなんですか?」
「どうとは?」
「使徒なんですか?」
大輔勘違い
Nが味方であると思っている。




