2-3 亡霊
ブックマークありがとうございます。
この物語は以下の要素を含みます。
・超不定期更新(半年に一回とか)
・競馬場に行ってしまった作者
いつもありがとうございます。
『何処で会う?』
『なるべく人がいない場所が良い』
ーー何処がいいと思う?
《一番なのは都庁の屋上だけど、近いのは古神川の橋の下なんだよね》
ーーその二択の基準が非常に気になる。
『じゃあ、古神川の橋の下で』
『分かった』
全く『因果の脱出』に顔を出していないということと、Nが消滅したということで心配になったから会うことにした。
放課後少し遠出して待合場所に向かう。県道が通る橋の下は川原になっていて、平日の今日は人が誰もいなかった。
どうやら私の方が先に着いたらしく、誰もいない。
「大輔」
「わっ……びっくりした」
誰もいないと思ったら、松村が先に着いていた。背後から声をかけられたから飛び上がってしまう。文句を言おうと口を開きかけたが、余りにも異常な雰囲気で絶句する。
「……」
「どうした?」
そこにいたルナフは、何というか……相当辛そうな顔をしていた。服装が黒いセーラー服に白い肌が合わさって、亡霊のようにも見える。
表情は笑顔を取り繕っているが、全然隠しきれていない。酷く疲れて絶望している。よく動いているなと思った。ここまで追い詰められた人は今まで数回見たことあるけど、例外なく壊れていた。
「泣くなら、胸貸すよ」
「……全く関わりがないから元がどんな性格か知らないけど、それは大輔か? 近衛か?」
「近衛朱莉の方」
「……流石、アリスの作者。Nと一緒に行動していたことはある」
アリスがNと一緒になにしていたのかは少しだけ聞いている。そして、Nがどんな感じだったのかも聞いている。
戦いが進むにつれて余裕がなくなりアリスに助けを求める程、精神的に落ちつめられていたこと。隠れて吐き、それでも戦いを続けようとしていた。何度も逃げるように言ったが、自分がやらなくちゃいけない仕事だと断り続けた。
「胸貸すとか、日常的にやっているのか?」
「女子相手にはね」
「元男だけど」
「今は女で私は男。気にしたら負け」
「そうか……大丈夫だよ。ちょっと、色々あっただけだから」
遠い目をする。一体なにを見てきたのだろうか?
「使徒とかいう存在に修行をつけてもらっていたら、得体の知れない化け物に飲み込まれた。それで気づいたらNがいなくなっていた」
「大丈夫のレベルを超えているから」
「うん、それも分かっている」
「やっぱり大丈夫じゃないじゃん」
大丈夫と言いながら大丈夫なラインを超えていると自覚している。深い意味でもあるのか、マジで心が壊れて正常な思考が出来ていないのか。
状況的に後者だろう。
ーーアリス、N相手にはどうしていたの?
《取り敢えず座らせて紅茶を飲ませた》
ーー理由は?
《紅茶がNの好みだった。ルナフちゃんはホットミルクの砂糖入り》
ーー了解。
* *
ーーホットミルクなんてコンビニで売っているわけなかった。
《しかも今は夏だしね》
「どうした? 慌ててコンビニに駆け込んで」
「ホットミルク買ってこようと思って」
「それはアリスさんの入れ知恵?」
「そうだよ」
代わりに買ってきた蜂蜜入り飲料を手渡し座らせる。松村は礼を一言入れ、一気に飲み干す。喉が渇いていたのかな?
「ホットミルクか……え?」
松村が落ちていた枝を手にして、コンクリートに書き始める。コンクリートだから文字を書けているわけではないが、頭の中では見えているのだろう。
「『 』関連……大輔」
「朱莉だけど何?」
「Nの……師匠かな? その人の好きな飲み物ってわかる?」
《緑茶》
アリスが緑茶を飲みながら答える。
「緑茶だって」
「何で『 』の事をアリスさんは知っているの? Nが教えたとしてもオーバーワールドに消されたから、分からない筈なのに」
雰囲気が明らかに変わった。魔力だろうか? 青銀の光の粒が松村の周りを漂い始める。
敵意、その矛先は俺に向けられている。
「なんで、どうして私が知らない事をアリスさんは知っているの?」




