インフレ
こんな話でも楽しんでいただけたら幸いです
《……あんなことあったら列車止まるのは当たり前か》
Nさんが運休の2文字を眺めながらため息をつく
《あと、そろそろ松村君に戻ったら? 戦闘の必要がないから》
それもそうだな
俺は切り替えて周りを見る
JRは殆どが運休している
私鉄各線は一部が運休か
でも渋谷に行けないぞ
《大丈夫、そういう時の対策はできている。シャベッターを使うよ》
シャベッターで察した
ハッシュタグをつけて連絡すればいいのか
そしたら仲間が確認できるわけか
《正解、私の言う通りに書いてくれる》
#因果の脱出
新宿駅のトラブルで本日いけるか怪しいので欠席いたします
次回の会合の日時が決まり次第連絡していただけたら幸いです
Nの弟子
《送信……よし、これで大丈夫》
さて、これからどうする?
《観光でもしたら?》
修行は?
《そうね……ん?》
Nが記憶の中で詰め寄ってくる
困惑している
《松村君って修行とか好き好んでやる子だっけ?》
なんか遠回しに馬鹿にされた気がしたんだが
確かに勉強とか練習とか嫌いだよ
けどやらなくちゃ何もできなくなる
今までで一番苦痛なのは暇だからな
ただボケっとしているより、ゲームやっているより、今後役立ちそうなのをしているのが有意義になるだろ
《だから修行?》
そうだ
今後新宿ダンジョンのようにトラブルに巻き込まれることが多くなるだろう
今の俺じゃ何もできないからな
Nの感覚的に俺はどのくらい戦える?
《足手まとい》
ストレートに答えやがった。さすがNだな
まあ、そういうことだ
覚えている魔法も障壁のみ
しかもただ覚えているだけで使いこなせない
《よくわかっているわね》
Nが満足そうに頷く
ここが少し前の日本なら修行なんていらないが覚醒者が大量発生した日本では色々な事件に巻き込まれそうだからな
《そうね、そういうことなら修行しようか》
そして、Nは修行を強制しない。自主制を尊重する
Nは頷きながら
《さすがね、私じゃなくてKとかだったら山籠りさせられていたかもね》
K?
《ん? ああ、そっか。まだそこまで来ていなかったね》
白紙化した物語に出てくるやつか
本名は?
《カディア》
答えるんかい!
わざわざKって伏せていたのに
《カディアって聞いてもわからないでしょ。だったら言ってもいいかなって》
************
カディアの名前を出すことで話をそらした
松村君は修行する方が有意義に時間を使えると答えたが、彼はそういうことを言う人ではない
修行よりもゲームをするだろ
テスト前なのにゲームをするような人だ
わざわざ面倒な修行をするなんてありえない
考えられるのはルナフに影響されている
ルナフは辛いことを進んでやるドMだ
辛いことをしていることに喜ぶ
そして終わった瞬間の達成感が気持ちよく感じる
12歳が辛いことをすること自体に喜ぶって
松村君は変な設定を考えたね
だからこそ私はカディアではなくルナフに後を託したんだ
私の予測演算が正しければ
あれを乗り越えられるのはルナフしかいないから
私の弟子であるルナフにしか
************
Nが急に腕を組んで考え始めた
何か問題でもあったのか?
ピロン
シャベッターの返信だ
『FF外から失礼します
了解です
Nの弟子!?』
N、返信来たぞ
《うん? 誰から?》
えっと、イカリから
《イカリ君か、イカリ君から返信あったなら全員に届くね》
ちなみにNは男には君、女にはさんづけで呼ぶ
例外はルナフなどの身内
つまりカディアは身内キャラということか
《辿り着くの早いよ。君のことだから気づかないままだと思っていたのに》
そして悲しいことに俺のことは松村君と呼んでいた
つまり身内としてカウントされていない
《しゃあないでしょ。文字通り次元が違うんだから》
……なあ
《どうした?》
ひょっとしてさ
対次元魔法って実在する?
《……さすが私たちの創造主ね。一度考えついたことは少しの情報でたどり着けるなんて》
物語の設定上、魔法には威力と難しさを分類するものがそれぞれある
発動の難しさを分類するのは初級、中級、上級、超級、禁忌級、真理級(思い出せるのはここまで)で表す
威力の方はその魔法がどのくらいの規模なのかで表す
人を攻撃する程度なら対人級
村を攻撃するなら対村級
町なら対町級
都市なら対都市級
国なら対国級
大陸なら対大陸級
俺が思い出せるのはここまで、最初期の時点でそこまでしかなかった
だがNの様子からその上
対星級、対銀河級、対世界級、そして対次元級もありそうだ
どんだけインフレしたんだよ
《中二病の時の君に言いなさい》