1-32 流星送還
お待たせ致しました。
ブックマークありがとうございます。
追記
サブタイトル間違えてたぁぁぁぁあ!
流星じゃなくて流星送還だろうがぁぁぁぁあ!
最終魔法というものが私たちの物語にはある。
1人の魔法使いが生涯を懸けて到達することができるかもしれない究極の魔法。
例として、本体を庇って消えたあの人なら『独唱・魔導砲』が最終魔法。魔法使いとしても極地に至ったあの人でさえ連発は出来ない。魔導砲は私たちの物語で最凶最悪の終末を告げる獣に対して使うための魔法。間違っても人に向けて放ってはいけない魔法だ。というか他に生命体がいる星で撃ってはいけない。磁気やら大気やら重力やら色々狂ってしまうので。
本体は『合唱・魔導砲』を都市のすぐ隣の東京湾で放っていたけど……いや、あの……。
忘れていたとはいえ、威力が最高火力の0.000001%程度しかなかったとはいえ……。
率直に申し上げてアホですか?
そして、それを模倣したと思われるロスト・ライフを私たちに向かって撃たないでくれますか!
「エル!」
Nさんの声に応じてNさんの手を取る。物語の中だけだったとはいえ、別の世界線だったとはいえ、お互いに知らない者同士とはいえ。
私たちはNとルナフ。言葉を介さなくてもお互いの考えは伝わる。
「「合体魔法:グランド・シールド」」
魔法の盾は一時的にロスト・ライフを防ぐが貫通してしまう。その僅かな間にそれぞれ魔法を発動させる。
「カナタボシ!」
「流れ星!」
青銀と銀の流星がロスト・ライフを中心に螺旋を描きながら空を翔ける。
「キリがないですね。Nさん、最終魔法は? というかエルって何ですか?」
「最終魔法は使えないわよ。エーイーリ・ルナフ略してL」
Nさんといい、?さんといい、私といい何故妙なあだ名がついているんですかね? 確かにルナフの頭文字はLなので間違ってはいないんですけどね。
いや、今はそんなことはどうでもいい。Nさんの最終魔法が使えるなら、割と簡単に接近出来たのですが、使えないとなると状況は厳しくなる。
「そろそろ私の射程圏内に入るけど、本当に一人で大丈夫?」
「ええ、現実側でオーバーワールドの注意を引いているとは言え、いつNさんが乗っ取られるか分からないので」
* *
「はい、そこの覚醒者の方。警察です。能力を使って何しようとしているんですか」
「は?」
「は、じゃないですよ。往来のど真ん中で足を止めて、クリスマスツリーみたいにピカピカ光っていたら不安になりますよ」
「別に危ないことはしていませんよ」
「あなたが危なくないと思っていても周りは不安だからね。やるならクリスマスに自宅でやってくれる?」
「はあ、わかりました」
「それでだけど、免許証とか覚醒者の証明書持っている?」
* *
「警察上書きされない?」
「大丈夫ですよ。その場合別の警察が駆け付けるように配置されているらしいので。警察以外にも宗教や極道の方にご協力を」
* *
「このぐらいお安い御用」
「ありがとうございます。うちの第二使徒がご迷惑を」
* *
「それならいいわ。それでも、万が一のことがあったなら煽ってから逃げなさい」
「了解です……カナタボシ」
カナタボシの発動中にもう一度発動することで進行方向を更新する。大まかな方向は変わらずNさんに合流する形となった。それに加えて。
「私の襟首を掴んでどうしたの?」
「目眩しですよ」
悟られるな、あれは切り札なのだから。
【set 『スカイフィッシュ』】
新幹線並みの速度でNさんが吹っ飛んでいく。襟の当たりにスカイフィッシュを仕込んだ。
高速で空中を飛び回る棒状の小さな生物。肉眼で確認できない程だが、写真に細長い残像があったことから存在が示唆されたUMAである。
その正体は高速で飛ぶ蠅とかの残像であるとされている。
即ち、存在を否定されたもの。
Nさんが反応するのに凡そ10秒。そこから私の作戦を理解する可能性は99パーセント。
「ねえ、シャングリラ」
肉眼で漸く確認できるようになった本体と繋がっている相手に聞かせる。
「大艦巨砲主義は時代遅れですよ」
大師匠は大艦巨砲主義
師匠は航空主兵論
では弟子は?
核爆弾?
インターネット戦争?
「本体に、衛星兵器を防ぐ程の力はありませんよね」
師匠が空を駆ける風となった。それを見ていた弟子はどう考えるか? 空よりも遠い場所、宇宙を目指した。
ルナフの1番好きな魔法が流星であることも、その考えからだ。
本体
操られた状態でも覚えておいて。
これは未完成の魔女であるルナフが、手にすることは出来なかった到達点。
ボツ案。
だから本体がこれを使う事はできない。でも、叛逆のように別の形で習得することが出来る。
その目に焼き付けて。
「憧れはこの胸に」
「願いはこの声に」
「未来はこの手に」
「夜空を彩る星、天を駆ける流星、幻想を見せる彗星、世を照らす恒星、地を守る衛星」
「人の想いは星に宿る」
「星々に込められし想いを束ね」
「世界へと送り還す」
「最終魔法: 流星送還」
この詠唱を持ってくる為に封印していたダンボールを漁りました。
追記
《えー、旧天が前書きで嘆いているのには深い訳がありまして。考えた魔法の中で流星送還はボツ案だったとはいえ、ルナフの努力の結晶で》
ユイ 『書き始めたら私並みに長々と書くことになったから略して』
《思い出があり、旧天自身が一番好きな魔法》




