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想像の世界〜自分のオリキャラになりました〜  作者: 旧天
幻想異聞奇譚 第一章 末世の北極星
115/167

1-27 どうか、お元気で

本日2回目の更新です。

松村圭太、ルナフさんへ


これを読んでいるということは、私が限定された時間の中で亡くなったということでしょう。


イナバが攻め込んできて、私が貴方達を運んでいる最中に亡くなった筈です。


私がこの世界に落ちて来たのは今から70年も前のこと。この70年の間空を見ることは出来なかったけど、24時間砂時計を見つけてからちゃんと数えてきたから大体は合っているはずです。


25598日


この世界で生き続けている日数です。


この膨大な時間の中で、貴方達を運んでいる僅か30分の間に亡くなったのです。これを運命と言わずに何と言うのでしょう。


だから、貴方達に託します。いいえ、お返しいたします。貴方達の未来を。


私たちでは取り戻すことが出来なかった未来を。



私が把握できているオーバーワールドの書き換えの対処法を教えます。これを知って貴方たちが実行するかはお任せします。これを実行しなければオーバーワールドに負けてしまいますけど。



脅しではなく、事実です。


ポラリスはこれで崩壊しました。


ですがこれを実行したとしても勝てる保証はありません。あくまで、オーバーワールドからの攻撃を軽減出来るだけ。しかも、この手段は大きな代償があります。


この代償がある故に、当時の私は実行ができなかった。戦うことが出来なくなるから。


その方法は唯一つ。




黒歴史ノートを全て焼却すること。




その代償に貴方は今思い出せていない物語を二度と見ることが出来なくなります。つまり、物語通りに成長することが出来なくなります。その後に出てくるキャラに二度と会うことが出来なくなります。


だけど相手がその気になれば、直接脳内を書き換えることが出来ます。


もう既に、黒歴史ノートから外れた行動をしているかもしれないけど。もしも、本気で世界を取り戻したいと思うなら黒歴史ノートを全て焼却すること。黒歴史ノートはオーバーワールドにとってコントローラーだから。


オーバーワールドに書き換える物語を与えないで。


オーバーワールドはあくまで現実世界の上書きを行なっている。だから現実世界の人間は無抵抗に書き換えられて都合の良いように動かされる。


それに対して覚醒者は別の世界の住民。自分たちが書いた物語の住民となっている。だからオーバーワールドは、直接その世界を書き換えないといけない。


作者の頭を書き換えるか、黒歴史ノートを書き換えるかして。黒歴史ノートを消してしまえば、書き換えるには作者本人に接触するしかないです。


この根拠は白紙となった黒歴史ノート。信じられないかもしれませんが、黒歴史ノートは巻き戻しの初期の頃は白紙なんかありませんでした。


何度目かの巻き戻しの後に、徐々に消えていったのです。私が現実世界にいた頃は、私達は消されていることに気付いていました。そして、全く知らない物語が頭の中に展開されていたことも。



どうやら今は、オーバーワールドが消したと気づけないようになっているようです。



仲間の1人が嘆いて、ノートを燃やしました。そしたら次の巻き戻しでは設定を書き換えられていませんでした。そして、次の巻き戻しではいなくなっていました。それに気づけたのはこの世界に落ちて、仲間の遺体を見たから。



ここからはオーバーワールドとオーバーワールドの使徒、それから傀儡について。



オーバーワールドの使徒の総数は不明、私が確認できているだけでも5人はいる。ひょっとしたら誰かが倒して減っているかも知れないし、数が増えているかも知れない。使徒に共通点はない。恐ろしいことに覚醒者ですらない使徒もいた。


そもそもオーバーワールドの使徒とは何か? これには2種類ある。一つはオーバーワールド自らがスカウトして力を与えた同志。もう一つはオーバーワールドが重点的に洗脳して傀儡となった者。


あいつらは良い人材や気に入った奴を見つけると連れ去ってオーバーワールドに洗脳させる。それで傀儡となって奴らの仲間になってしまう。その中でもオーバーワールドが気に入った者は使徒になる。


これを知った時の衝撃は言葉にできない。


だって、使徒以外にもオーバーワールドの傀儡はいるんだから。オーバーワールドだけを倒せばいいと思っていたら使徒がいて、その使徒の他にもいるんだから。


誰が味方なのか敵なのか分からない。


仲間がいつの間にか敵になっていたり。誰も信じられなくなった。使徒にも何度も殺されて、仲間を奪われて、第三次世界大戦では守ったはずの国民から石を投げられて。



どうすればいいか分からなくなった。


私は戦いから逃げた。


私は軍人でも聖人でもない。元はただの女子大生。こんな状況に立ち向かう術を持っていない。心が簡単に折れてしまった。



そんな私が貴方達に戦うことを強要は出来ない。辛かったら逃げていい。本当だったら、貴方達はこの戦争に関わることはなかったから。


それに、今の状況ではオーバーワールドに勝つ手段がない。オーバーワールドに立ち向かう者のほとんどが討たれている。そもそも、最初から劣勢でもあった。



一度だけ、オーバーワールドと直接話したことがある。偶然にも遭遇してしまって。



オーバーワールドは降参したら苦しまないように洗脳して楽しい人生を送らせてあげると。


取り敢えず切ってみた。


あっさりと殺せた。でもあいつは近くにいた使徒がノートに何か書くと復活した。巻き戻しもしていないのに。


化物だった。


でもどうやら、復活するには他に覚醒者の黒歴史ノートが必要みたい。あいつは使徒とは黒歴史ノートがあれば幾らでも復活すると言っていた。


無理だと、勝てないと思った。だから逃げた。私は逃げて逃げて、気がついたらこの世界に落とされていた。


私はあんな奴と貴方達を戦わせたくない。誰も文句は言わない。現実世界に帰っても戦わなくていい。


でも、貴方達にはこれを知った上で判断して欲しい。









Nはオーバーワールドの傀儡型の使徒である。










オーバーワールドが復活したときに近くにいた使徒がNだった。Nはオーバーワールドが切られるまで私と同じように闘っていたけど、いきなり自分の黒歴史ノートを取り出して


『主よ、復活してください』


って唱えて何かを書いた。そしたら復活して、復活した瞬間正気に戻ってオーバーワールドが復活したことに驚いて


「龍崎、これでも戦うか?」


オーバーワールドに言われて無理だった。




私はこれを見てしまったから心が折れてしまった。Nは自分が知らないうちに使徒になっていた。


これをエーイーリに話したけど信じなかった。自分の師匠のことだから大丈夫だって。全く使徒の気配がない。傀儡になっているはずがないって。2人が間接的にオーバーワールドに操られてしまうというのに。


だから妥協案としてこの世界にいる間だけは2人からNを引き離した。ずっと記憶喪失になっていたN、実は記憶がないふりをしていたの。2人に関われないように。エーイーリも貴方を育てる上で有効だと判断して同意してくれた。N自身も普段の状態だから使徒であることは隠して納得してもらった。


3人で決めた手筈では現実世界に帰還するときに明かして貴方達と一緒に行く予定だった。



知らない方が幸せだったかもしれない。知らなければ何も考えず洗脳されて苦しむことがなかったのかもしれない。


その方が2人にとって良いことだったのかもしれない。



他の人にとってもそれが良かったのかもしれない。気がつかない内に洗脳されて、苦しまずに済むのなら。


貴方達と出会ってずっと悩んでいた。だから賭けてみた。私の命で。


私がNは使徒であることをオーバーワールドは知っている。


今までは直ぐ近くにNがいたから切り出せなかったけど、このタイミングで話す可能性があると相手も判断する筈。そして、本当にオーバーワールドの使徒なら妨害してくる筈。


貴方達に怪しまれないように呪いでこのタイミングで死ぬように。ひょっとしたら本当に寿命かもしれないけどね。


さっきは使徒だと言っていましたけど、今でも信じられません。


これを読んでいるということは、そういうことだということ。賭けに負けました。



仮に、この事実を知って信じなくてもいい。貴方達がどれほどNのことが好きかはこの短い間でも理解している。修行が終わるたびに話かけにいって。記憶を取り戻そうとして。



でも、この話を信じて、それでも戦うというならば……。





Nをこの世界で殺して。





貴方の頭から離れている今が最初で最後にチャンスだから。現実世界に戻ってしまったら貴方の頭の中に戻ってしまって手出しができなくなる。


オーバーワールドを倒すことが出来なくなってしまう。


残酷な選択を迫ってしまってごめんなさい。でも、貴方には知る権利があった。知って欲しかった。


仮に戦うことを選択しても状況は最悪、もう味方がいないかもしれない。


最後に、戦うことを選択して途中で諦めても構いません。貴方の人生ですから。


貴方達は私を恨むかもしれません。私には選択することができなかったのだから。Nのことを明かさなかったから。


でも、私のことを信じてくれるのなら……。


人はいつか死にます。


こんな老体だからいつ死んでもおかしくはなかった。だからこのタイミングで死んでもおかしくはないでしょ?


だから貴方が気にすることはありません。むしろこの願いを読んでくれたのだから、私は幸運なのでしょう。最後に、私が祈りを捧げる相手ができて良かったです。


短い間でしたが、娘、孫のように思っていました。


どうか、お元気で。

空の上から貴方達の幸運を祈ります。

本当、何で時間がないんだろう

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