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想像の世界〜自分のオリキャラになりました〜  作者: 旧天
幻想異聞奇譚 第一章 末世の北極星
103/167

1-18 何で?

お久しぶりです


長々と休ませていただきました。お待ちいただきありがとうございます。

人生で初めてキレたのかもしれない。


今まで喧嘩とは無縁の生活だった。喧嘩が起きないように隠れたり身を引いたりするのが俺の生き方だった。何か悪口を言われても決してキレないように、怒りを爆発させないように裏で枕とかにあたっていた。暴力で周りを認めさせようとするのはカッコ悪いと思っていたから。


感情の赴くままに拳を振るうのは初めてだった。攻撃魔法を使わず、いつの間にか身体強化をかけるのも忘れていた。


龍崎さんはそれを全部受け止めてくれた。龍崎さんは最初の数回は攻撃をしてきたが後は受け止めるだけだった。俺は龍崎さんをサンドバックのように殴り続けていた。


ただの八つ当たりだった。


なんか


醜かった。


「はあ……はあ」


激しい動きと涙で息が続くかなくなり、その場に座り込む。結局、まともに拳を当てられたのは最初の一回だけ。それもわざと受けてくれた攻撃だった。後の攻撃は腕で全て弾かれた。刀は途中で鞘に収めていた。


「何で、俺はこんなにも無力なんですか?」


龍崎さんのみならず、あの人でさえオーバーワールドに敵わなかった。


単純に考えて龍崎さん以上の力を、あの人以上の力持たなくてはならなかった。


連合、ポラリス、アカシックレコードの総戦力を超える戦力がいなくてはオーバーワールドに勝つことはできない。


あの人を取り返すことができない。


「何で……私だったんですか?」


私に引き継いだNさんはどういう意図で私に引き継いだのだろう? それこそ、あの人やNさんの仲間に引き継げばよかったのに、弱い私に引き継いだ意図が分からない。作者の気持ちに応えられるほどの力を持っていない。


「それは私にも分からないさ」


龍崎さんが懐から手拭いを出すと汗で汚れた私の顔を拭ってくれた。


「Nがオーバーワールドと何があってどんな状態になったのかは分からないさ。だから何でルナフちゃんに引き継いだのかも分からないさ。ひょっとしたらルナフちゃん以外に引き継げなかったのかもしれないさ」


引き継げないということは無いと思う。もう思い出すことができないがあの人は間違いなく覚醒先になれた筈だ。


「推測でよければお話いたしましょう」

「エーイーリ」


私と同じ姿をした分身のようなエーイーリがいつの間にかいて私の腕をムニムニと触る。ただ触っているわけではなく、筋肉を確かめるように触る。触診というものだっけ?


「オーバーワールドはNさんでは倒せない相手でした。作中最強とはいえ覚醒者のNさんはただの覚醒者でした。つまり、能力に制限があったんです。攻撃魔法は勿論、転移魔法ですら東京23区を横断するぐらいしか移動できません。作中みたいに別の大陸に移動するなど不可能でした。それに、覚醒者にはNさん以上の力を持った人が大勢いました。作中では敵なしだった英雄が、何度も敗北して挫折を味わったんです。立ち直れるほどNさんの精神は強くありませんでした。本当なら使える力を封じられて、自分は最強のはずなのにこの世界では有象無象の過ぎない。その鬱憤を今の貴方のように吐き出すこともできませんでした」


Nの設定は最強、覚えている限り敗北を味わったことがないのは確かにそうだ。壁にぶち当たることも滅多になかった。その壁も簡単の乗り越えられるものだった。


だから現実で大きな壁に当たった時、完成されていたNは乗り越えることができなかった。壁を乗り越える方法を知らなかった。精神的成長を知らなかった。


周りに頼ることができなかった。全て自分の力で解決しようとしていた。作中では仲間がいたけど大事なことは全部Nさんがやる。現実でもそうだったのだかもしれない。


「その時のNさんの心を知ることは出来ません。だけど別の誰かに引き継ぐことになった時にこう考えたのでは? 挫折を乗り越えて強くなれる人。その条件に当て嵌まるのはルナフの名前を持つオリキャラのみでした。他のキャラは大きな壁にぶつかることが滅多になかったので。私と貴方は弟子です。自覚しているように弱いです。龍崎さんが言った通り客観的に見ても弱いです。作中では守られる存在でした。何度も壁に当たって、打ちのめされて、屈辱を味わって、それでも師匠にように強くなりたいと思い行動していました」


「エーイーリ、そこまで教えていいの?」


龍崎さんがエーイーリを遮るように尋ねる。


「少々私の立ち位置に反していますがこの情報は必要です。例の人が消されたのは予想外でしたが……本当に予想外でした」


エーイーリは顔を伏せて目の辺りを拭う


「自分よりも優れた人たちが、多くの英雄たちが敗北した相手にぶつかろうとする。死にに行くようなものです」

「それでも進まなければならない」


進まなければならない。立ち止まっている余裕なんてない。


「だけど進むための力がまだ無い、時間も無い……その葛藤は分かるさ」



「その葛藤はあなただけのものではありません」


「私たちは敗北者、もう戦場に向かうことすらできないさ。戦うことを許されていない。だが、ルナフちゃんなら可能さ」


「私たちが可能にしてみせますよ」

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