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想像の世界〜自分のオリキャラになりました〜  作者: 旧天
幻想異聞奇譚 第一章 末世の北極星
100/167

1-15 『    』の願い

遅刻してごめんなさい。連日投稿が途絶えてしまいました。


明日というか今日はちゃんと投稿できるようにします


************

《ちょっと区切らせて》

************


お気づきの方もいるかもしれませんが


なんと100話目、3桁に到達することができました!


まさか見切り発車で始めた物語がここまで投稿できるとは思ってもいませんでした。


それと同時に、未だに全体の八分の一も書けていないことに恐怖しています。


そして100話目という記念すべき回だというのに


主人公視点ではありません


いつもありがとうございます

ブックマークありがとうございます

「ぶちかませ!」


圭太がそう叫んだ。チラリと彼のことを見てみると気を失う直前で踏みとどまっている。それでも目には生気が宿っていて最後まで見届けようとする。


彼は疑うことなく、私がこの状況を打開できると信じている。私が失敗することなんて考えていない。


男女関係なく、大事な人に信頼されて応援されて燃えない奴はいない


少しだけ顔を上げて天に向かって展開されている魔法陣を見る。一つとして同じものはない。一つの魔法につき、一つだけ魔法陣が展開される。平面魔法陣、多重魔法陣、立体魔法陣。だが、ここに展開されている魔法は全ての攻撃魔法ではない。


無属性と氷属性と風属性の魔法は展開しない。


3人が使う魔法はとっておかないと、この先戦えない。


だけど出し惜しみで勝てる相手ではない。追い返すだけで精一杯なのだから。だけどその先には未来がない。あるのは行き止まり。私が消滅した後に無抵抗となった圭太が呆気なく書き換えられる未来のみ。だから圭太たちの分を残しておかなくてはならなかった。


大丈夫


とっておきがあるから。



「魔法、装填!」


展開していた攻撃魔法が凝縮されて拳大の大きさまで縮む。それは虹色の宝玉のように見える。混ざり合って黒色に染まるのではなく、それぞれが消えることなく輝く。


それを右手で掴み、空へと駆け出す。


握り拳から漏れる虹色の光は尾となって空に消えていく。地上から天へと昇っていく私はさながら七色の流星に見えるだろう。音速を超え、第一宇宙速度も超えた速度で空を駆ける。だけどオーバーワールドの目に届くことはない。


私のことなど眼中にないのだ。どうせ届かぬ攻撃だと思っているから無視しているのだ。


何故ならあいつがいるのは現実の世界なのだから。圭太の頭の中の想像の世界のオリキャラが現実世界に干渉することは覚醒者にならない限り不可能なことなのだから。仮に想像の世界から離脱できても現実世界には存在しないのだから消えてしまう。


それには私以外ならと注釈がつく。


一歩


想像の世界を離脱する。圭太の想像の世界から飛び出す。


二歩


境界を越える。現実と幻想の境界を跨ぐ


三歩


現実世界に干渉する。


だけど私が消えることはなかった。自我を持って私は、沖田ユイは現実世界に足を踏み入れた。


目は口ほどに物言う


私が圭太の想像の世界から離脱できたことに、明らかに動揺している。消滅しないことに困惑している。


ルール違反の覚醒者がいるように、ルール違反のオリキャラだっている。


それが私だ。自分で言うのもおかしな話だけど今回の巻き戻しにおいて私は最大の不確定要素とも言えるだろう。覚醒者となっていたら間違いなく特急特異点となっているだろう。


だからあいつも、圭太に力を授けた。力の受け渡しを予知できないほどオーバーワールドも情弱ではない。必ず何処かで邪魔が入るのは分かっていた。


前回だってそうだった。


ここまで早く気付くのは予想外のことだったけど対策が出来なかった訳ではない。オーバーワールドを退ける力を持った者が守らなければならなかった。そしてオーバーワールドを一度だけとはいえ退ける力を持った私がいたからこそルナフは選ばれたのだ。


オーバーワールド


巻き戻しは貴様だけの特権ではない。



右腕を大きく引く。ここまで近づいたのは絶対に当たる距離だから。この距離ならばお前は全てを書き換えることはできない。


私の最後の攻撃

そしてこれから始まる貴様への反撃の狼煙


「混声全部独唱!」


かつて世界を滅ぼそうとした獣を黙らせた一撃


それを見たNが真似をして


弟子であるルナフに継承した


それを今再び原点が使う。


これが私の最終魔法

彼が私の為に考えてくれた魔法。


「魔導砲!」


虹色の光が右手から放たれる。光は螺旋となってオーバーワールドの目へ吸い込まれていく。それが次々とマシュマロへと変換させていく。だが『障子紙』のように複数の魔法を同時に使用しているから一瞬で書き換えることはできない。


貴様が如何に神のような力を持っていようと、グランド・アイギスでさえ一瞬で書き換えることが出来なかったお前が魔導砲を処理できるとでも?


この魔法は圭太が書いてきた物語に登場する魔法の殆ど。3年……たった3年、されど3年。


その3年を……


まさか、たった一瞬で書き換えられるとでも思っているの?


処理できなくなった分の魔導砲がオーバーワールドの目に届く。


痛いだけでは済まない。今までの巻き戻しにおいてオーバーワールドに攻撃が届いたのは何回あったのだろうか? ただの、覚醒者ですらないオリキャラの攻撃が届いたのはオーバーワールドにとって初体験だろう。


意表をついた攻撃は絶大な効果を発揮する。


その結果は圭太の想像の世界から目を離すこと。これで私の目的はほぼ達成された。だけどここで終わらせるつもりは毛頭ない。残された魔力を全て魔導砲に注ぎ込む。どうせ消えるのだから、最後ぐらい華々しく散ろうではないか。


だけどオーバーワールドも馬鹿ではない。魔法を書き換えられないのであればその魔法を使っている私を書き換えれば良い。そもそもオーバーワールドに攻撃を届かせる存在をこのままにしておくわけがない。


終わりが迫る。


私の設定を書き換えられる。


圭太から授かった設定が変わる。


私の宝物が奪われる。


声が変わるーー変わったの?


姿が変わるーー変わったの?


職業が変わるーー変わったの?


性格が変わるーー変わったの?


名前が変わるーー変わったの?



何処が変わったのかは分からない。ひょっとしたら何処も変わっていないのかもしれない。でも、自分の存在がズレている。自分の設定が噛み合っていない。


これが書き換えられた感覚。


圭太のことを思う。


私はこれから圭太のオリキャラではなくなってしまうだろう。


圭太の頭の中からは私に関する記憶が消える。きっと私が消えてしまった圭太の頭にはポッカリと空白ができているだろう。


『    』が消えてしまった後に残された空白。その空白こそ私なのだ。


空白がある限り名前を忘れても、声を忘れても、姿を忘れても、私の全てを忘れても、私がいた痕跡を完全に消すことができない。普段ならあり得ないオーバーワールドのミス。私が想像の世界から離脱して、オーバーワールドと圭太の想像の世界との繋がりを切断したことによって、圭太を改竄できなくなったことでようやく露わになったオーバーワールドの改竄能力。


私を改竄することはできるが圭太の頭の中までは直接改竄できない。


普段のオーバーワールドなら書き換えて辻褄が合わなかった箇所を修正してバレないようにする。その修正ができないのだ。その修正をする相手に届かないのだ。


今までの巻き戻しにおいて改竄能力に気付くことができた人はいたが、その証拠を掴むことが出来なかった。それを圭太は手に入れることができる。


だけどそれはとても残酷なことだ。


オリキャラを大事にする彼のことだ、忘れてしまったことを嘆くだろう。空白となった『    』に気づいて泣き喚くだろう。


彼がどんなに苦しんでも

彼がどんなに叫んでも

周りが慰めても

どんなに時間が経っても

その空白が埋まることはない。


彼は私を取り返すまで永遠に嘆くだろう。




『    』という、たった1人のオリキャラの為だけに




それを嬉しいと思ってしまう私は、悪い魔女なのかな?


これはとても残酷で、残忍で、酷薄な願い。

最初で最後の我がまま。



永遠に、『    』()がいた痕跡を忘れないで。



そう願う私はきっと圭太のことを忘れてしまう。圭太の痕跡さえ書き換えられてしまう。これに抗うのは不可能なのだから。私の力を持ってしても、この不可能を可能にすることが出来なかった。


私は忘れてしまうのに、圭太は覚えていて欲しい。


あまりにも自分勝手な願い。


それを許してほしい。


だってこれは私が自我を手に入れて、作中の設定ではなく『    』として持った初めての願望だから。




それじゃあ



またね







作者さん!


下らないことかもしれませんが書かせてください。


読者の中で物語を書いている人がどれくらいいるのか分かりませんが、こんな経験ありませんか?


オリキャラが思った通りに動いてくれない。

わかりやすく言い換えると指示通りに動いてくれないです。


今回のユイがそうです。


こんなにヒロインムーブするキャラだったとは思っていませんでした。


黒歴史ノートからの付き合いだったのですが私も全く彼女のことを理解していなかったのだなと思いました。



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