書いている自分もわからなくなった
うん、自分が理解できなくなりました。
おーいN、記憶の解放ってなんだ
家に帰って自室で頭の中でNに聞いてみた。
ポンっと頭の中に書斎で本を片手で開いているNが現れた。
《記憶の解放っていうのは封印してある記憶が蘇ること。例えば前世がドラゴンだったとか、数百年前まで敗戦国の英雄だったとかだね。記憶が封印される原因っていうのは様々だよ》
ダメだ。
Nは物語の設定のことしか言っていない
物語の中で失われた記憶を取り戻す
つまり、覚醒者としての記憶解放のことは言っていない。
じゃあ、なんで戦闘の心構えを思い出した時に『記憶の一部が解放された』なんて言ったんだ?
Nは本を放り投げると
《君みたいに感がいいガキは好きだよ、松村君》
感がいいとか、少し考えれば出てくるだろ。
それから好きなのかい、嫌いだろ、そのネタは
あともう少し会話続けてから言え
《まあ、そんなことはいいじゃない。気付いて欲しかったし》
Nが指を鳴らすと書斎が変化して物語の中で描いた巨大な時計塔の上にいた
夕焼けで街が幻想的に見える
街に張り巡らされた運河が輝き、人の往来が見えた。
《改めて自己紹介しよう》
Nは屋根の端まで行くと
《私は君とNがシンクロ率100%に到達した覚醒者だ。暫定的に松村Nと名乗っておこう。今まで通りNで呼んでくれていい。そもそも今の私は覚醒者として失敗した存在だ。そしてただの記憶だ》
さらっと気になることを4つ言ったぞ
まず俺が覚醒者としてNになった?
《その通り。だけど今はそうじゃない。昔の話さ。それこそ十年単位でね》
謎が謎を呼ぶっていうのはこういうことか
《あぁ、難しく考えなくていいよ。あなたがルナフになった日を覚えている?》
一昨日だろ。忘れるわけないだろ
《あの日……そうね、あの日だと呼びづらいから未来で使われる『天災の日』と呼ぼうか、天災の日を起点として何度もやり直されているの。何千、何万と》
わお、ジャンル問わず人気のやり直しのパターンか
物語の終盤になってやり直して今までの思い出を振り返ると胸熱展開になりやすいやつか
Nは片目を瞑ると
《私にとってはクライマックスなんだよ。確かに君にとってはまだチュートリアルの段階だけどね》
Nが片目を瞑る時って話を話を早く進めたいときなんだよな
《私の癖を知っているならわかるはずよね、私は面倒くさがりやだから早く終わらせたいの》
どうぞ続けてください
《やり直しに気づけたのは覚醒者のうちほんの僅かなのよ。共通点はわかっている》
共通点? Nにも当てはまることか
魔法使い?
いや、数が多いからなしだ。
主人k
《覚醒者としてなったオリキャラが物語内で因果から外れたことがあるのよ。具体的にいうとタイムトラベラー、やり直しの主人公……私の場合はまだ言えないけどね。覚醒者として記憶が取り戻されていないから》
相手のペースに合わせようよ……
《だから目が覚めたら、道を歩いていたら突然天災の日に戻るなんていうのが何度も起きたよ。戻る瞬間は不明。戻る理由も不明。誰がやっているのかだけしかわからない》
いや、犯人わかっている時点で十分すごいだろ
《まあ、これはかなり頑張ったよ。さて、次にシンクロ率100%かな》
そうだ。俺とルナフの場合は46%だったからな。
《あれはそのまんま。シンクロ率っていうのはどれだけオリキャラと同化できているかということだ。君の場合は半分弱同化しているということさ。シンクロ率が瞬間的に高くなることもあるよ。例えば戦闘中。一人称が私になるでしょ?》
あぁ、確かにふと気付いたらなっていたしな
《まあ、それは置いといて。私が何でシンクロ率100%なのか》
すっごい気になる
Nは自分の胸に右手を置き、左手を差し出し
《そのオリキャラがどれだけ本人に影響をもたらしたかだ》
Nは、Nと初めて会った夢で一番最初に会ったポーズをとっていた。
Nはキャラを作ろうとして生まれたわけではない
Nという存在がいつのまにかいた
魔法使いという存在で夢から覚めてもなぜか忘れなかった
そしてそれは俺に大きな影響をもたらした
《うん、君の中二病発症の原因だ。君の思考を変えてしまうほど私は影響があった》
シンクロ率100%も納得だ
ルナフの影響は……
《まだ脇役キャラで作った頃の記憶までしか取り戻せていないからどんな影響があったかわからないと思うよ。さてと、次は覚醒者として失敗した存在だね》
それが一番謎だ
覚醒者に成功とか失敗とかあるのか?
Nは首を横に振って
《私が失敗したと思っているのさ。人によっては私の状態が大成功という人もいる》
もったいぶっていないで早く言ってくれ
《覚醒者とはオリキャラの記憶、力、姿を手に入れた人類である。姿は変わり、力を手に入れ、記憶も手に入れた。だが完全にオリキャラになれていないない。それはなぜだと思う?》
決まっているだろ
元の記憶……人格が残っているから
《その通り、元の人格があるから完全にオリキャラではない。だけど私は違う。私は完全にNになってしまった》
完全に?
《松村君の記憶があるだけで、松村君の人格はゼロ。シンクロ率100%って言ったけど、それは私が松村君の体を乗っ取った。松村君を完全に別の存在に変えてしまうほどの影響力があった。そして一つだけの人格となった。Nの人格だけが残り松村君は死んだも同然になった》
は? ということは俺をNが殺した?
《そうとも言えるね。だから私はやり直しの時を狙って現実世界の因果から脱出した。そしてルナフに後を託した。松村圭太の人格は私がいなくなったことによって蘇った》
Nは魔法で文字を書き出す
天災の日(一度目)
↓
Nとして覚醒
↓
やり直し
↓
やり直す前と変わらない状態(Nの記憶引き継ぎ)で天災の日を再び迎える
↓
何千回と繰り返す過程で松村圭太の人格消失
↓
N、因果から脱出
↓
ルナフとして覚醒した天災の日(?回目)
松村圭太の人格も蘇る
↓
今ここ
《私は因果から脱出して君の記憶を弄らせてもらった。記憶にNの何千回という記憶を埋め込み、記憶を元にして作られた自我のようなものが私だ。私は自我があるように思えるだけの記憶だ》
うん、ようわからん
《わからなくていいのよ。まあ、簡単にいうと因果から脱出したNの記憶がただしゃべっているのが私だから》
? まあいっか。
散々因果からの脱出って言っているけど、要するにどういうこと?
《因果からの脱出。それは、世界の理から外れること。世界の観測者となることよ。水曜日に東京のハチ公のところに行って。仲間がいるから。右腕にリボンを巻いてね》
Nはその場でクルリと一回転すると消えた
うん、よくわからないけど、なんか大変だということはわかった
要約
何回も繰り返している
Nの代わりにルナフが覚醒
今度水曜日にハチ公