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池  <第1部>  作者: M:SW
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池の水

本屋通いも生活の一部になり、読み切れない哲学書が増えていく。

何冊も広げては考え、その考えをまた考える、という思考のループにはまり込む。

読んでいる時、書いている時の静寂の時間が心地良かった。

取り敢えずのテレビも付けず、携帯にも手を付けずにいられた。


この二ヶ月位、充実しているように感じられた。

なのになぜ。

その夜は不意にやってきた。


泣きつかれて寝るなんて、子どもみたいだ。

携帯の電源は切れて、アラームは鳴らなかったのに、いつもと同じ時間に目が覚めた。

そんな所だけは大人になった。


どんな夜を過ごしても朝が来るのは変わらない。

泣くとスッキリするんじゃなかったのか?

心が洗われるんじゃないのか?

通説に逆らい、オレの心は全くスッキリしていない。それ所かモヤモヤしたものが心を重くしていた。


心と同じく重い体を無理やり起こし、いつも通りの流れで仕事に向かう支度をする。


テレビをつけ、コーヒーを淹れる。コーヒーがカップに注がれている間に顔を洗う。

ボーっとしながらコーヒーを飲んでいると、テレビから流れるニュースが耳に入る。いつもはそれほど気にして見ていないが、そのニュースは、耳に入ってきた。

『池の水を抜く作業が行われました。』

何でもない、地域の些細なニュース。かいぼり、って言うんだっけかな。テレビ画面を見ると、池の底に溜まったヘドロと共に、自転車のような粗大ゴミや、缶やビンといったありきたりなゴミ、賽銭箱なんていう不思議なゴミ?まであるようで、そのゴミを取り除くためのボランティアに来ていた人がインタビューに答えていた。


なるほどな、と一人で納得した。

昨日のオレの涙は、あの池の水だ。

池の水を抜いた後に現れたゴミ、あれがモヤモヤの正体だ。

モヤモヤの原因と思われる物が分かり、いくらかスッキリした。が結局は、自分の中に溜まったゴミは何なのか、誰かゴミの撤去作業を手伝ってくれるのか、新たな疑問が生まれただけだった。

それに何より、なぜ池の水は溢れでたのか。


気分が重いままでも、仕事に向かう支度はできていた。

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