変化
小説とは違い、哲学書は簡単には読み進める事ができない。これは読書というよりは、勉強か。
難解すぎて、固まった頭にはなかなか入ってこない。ひとつの言葉を理解するのにも時間がかかる。
歌はあんなにスムーズに、何なら勝手に入り込んでくるのに。
一人、哲学書と格闘しながら時々ふと考える。何をやってんだ、オレは。
暗記していただけの受験勉強とは違う。いちいち考える。
考えることに疲れると歌を聴く。そしてまた、自分が書きたいことを書いてみる。
読む、聴く、書くの繰り返し。
歌がオレを後押ししていた。
仕事から帰ると、なんとなくテレビをつけ、飯を食って風呂に入って寝るだけだった毎日が、急に忙しくなった。帰宅後、仕事で疲れているはずの体と頭は再起動された。今まで“そんな時間はない”と思っていたのに、本を読み、物語を書くことができている。書く前の自分は一体何をしていたんだろうと思ってしまう。
彼はきっと、そんなムダな時間の使い方はしていないんだろうな。
無欲に生きてきた。それでも幸せだと思っていたし、何一つ不自由なことなんてない。今までの生活で充分だと、思っていたはずなのに。
少年の頃描いた淡い夢を追いかけてみよう、と机に向かいひたすら書いている自分の、遥か遠くの方には、何をやってんだ、オレは。と冷めた目で見ている自分がいた。
そんな自分に出来るだけ気付かないようにしていたように思う。
しかし意識的に、無意識に追いやろうとすればするほど意識してしまう。冷めた自分。
普段なら、その冷静な判断が自分を正しく導いてくれていたはずなのに、今回は邪魔でしかなかった。
何も悪いことはしていない。書きたいことを書いているだけだ。
オレなら、できるよ。もっと。書ける。
自分に言い聞かせながら、冷めた自分を追い払う。
こんな脳内での葛藤は、ひたすら平穏だった感情に、波を立たせた。
歌と小説、ジャンルは違えど、言葉を使った表現で、彼に近づける。なんて、見る夢が広がりを見せ、欲が深くなる。
欲が深いことは、悪いことなのか。実力がなければ、ただの無謀だ。実力があれば、あればいいだろう。
とにかく、やってみるだけだ。




