プロローグ
子供の頃、本を読むのが好きだった。
小学生の頃は、図書室にいることが多かった。本棚を眺めているだけでも楽しかった。
選ぶ本は直感で、内容を全て理解して読んでいた訳でもない。文字を眺めているだけでも良かった。
自分なりに解釈し、想像することは何より楽しい遊びに思えていた。
歌に興味があった訳じゃない。
そんなオレでも、惹かれる歌があった。
その人の歌は、なぜだか頭の中でアニメーション化された。
まるで、本を読んでいる時のような世界観は、歌に興味のない少年の頭にも残っていた。
その人が、またテレビで歌っていた。
やはり感じたのは、まるで小説。
懐かしさから、過去の歌を検索し、聴くようになり音楽のある生活が始まった。
そして、あの歌。ファンタジー小説かと思って聴いていたら、ある一節が“哲学者と戦争”かと思えた。いや、そもそも哲学的な歌か。
頭の中で渦巻くファンタジーと哲学は、あの頃の、少年時代の夢を思い出させた。
小説家になりたかった。
野球少年が、メジャーリーガーになりたい!と思ったりするように、読書好きな少年は、小説家になりたい!と夢をみたりする。そんな程度だったはず。
そこから本当に夢を叶える人は、ほんのひと握りで、大抵は途中で挫折する。いや、挫折を味わう前に、自分から諦める。どうせ、ムリなんだ。
そうやって、ムリじゃない程度の頑張りで何とかなることだけをこなしていく。こなしてきた。それにより、今の自分がある。
大人になり、本を読むこともほとんどなくなっていた。
ましてや自分が書きたい、と思っていたことなんて、全く忘れていたことだった。あの歌は、閉ざされていた扉を開いた。




