生涯出金管理ノート
ホームレス、いつ誰がなるかわからない天災みたいなもの主人公佐々木はそれなりの人生を歩んでいた。いや、普通の人よりもいい時期があったかも知れない。しかし、友人の借金のせいで一家離散、ホームレスとなった。
新宿駅、ホームレスの佐々木はもう八十になる。佐々木は友人の借金を肩代わりしホームレスになった。今日もゴミ箱を漁る日々である。また、夜が来るのか。そう思って新宿駅から人がいなくなっていくとき、一つのノートが落ちているのに気付く。そこには【佐々木英信】と自分の名前が書かれていて、消しゴムがセットになっていた。
「はて?こんなノート持っていたかな?」
とりあえず開いてみると、ノートには佐々木が今まで買った品物と金額が載っていた。うわーとめくると、【宝くじ】【一万かける六十年】と書かれていて、確かに宝くじは毎年買っていたことを思い出す。奇跡とも言える当選金額ゼロ円!
「くそー! これだけでもなかったらなぁ!」
佐々木は何気なく消しゴムで消してみた。すると……。
ストン!
なんと六十万円が空から降ってきた!
「え……?」
幸い誰も見てなかったので全部拾う事ができた!
そして、気付く。
「ま、まさかこのノートは、消しゴムで消すと無かった事にできるのか!?」
今一度試してみる。フラれた女への投資額四百万円。これを消す。
ドサッ!
空から四百万円が降ってきた! これはもう偶然では無い! 佐々木は人生最大の汚点。借金を消した!
すると、目眩がして倒れた。
目を醒ますと家族とマイホームが有った。
「これは?」
「パパ、どうかしたの?」
娘が呼び掛け佐々木はわかった。借金で逃げて行った妻と子が借金を消したから戻ったんだと。髪の毛も生え揃っていてスーツでビシッとしてる。(年まで若返った! 凄いノートだ)
しかし、佐々木は思った(娘はともかく、借金しただけで別れる妻なんかいなくていいのでは?このノートの婚約指輪を消せばまだやり直せる)と。早速佐々木は妻に与えた婚約指輪や結婚式費用をノートから消し去った。
「おい佐々木! 聞いているのか! 寝たいなら学校やめろ!」
佐々木は高校生になっていた。名門校で授業は厳しく妻と出会った高校だ。
「スミマセン先生! 昨日予習していましたら寝不足になったみたいです」
「ほぉ、それは感心だ。皆も佐々木を見習って予習復習するんだぞ! だからと言って寝てはいかんがな」
ワハハハハハ。教室から笑い声がこだまする。
「(そうだこの先生は塾が大嫌いで、自分の授業だけで大学受験を目指してたっけ)」
「ただいまー」佐々木は何十年ぶりかに親に会えるのを楽しみにドキドキしながらも、テンション抑えて佐々木と書かれた一軒家の玄関を開けた。
「お帰りなさい!」「お帰りーお兄ちゃん」
母と妹が出迎えてくれた。感動の余り泣き出してしまう。
「どうしたの?学校で何かあった?どこか痛い?」
母が凄い心配をしてくれる。母の優しさに更に涙が止まらない佐々木。父にも会いたい、早く会いたい! 佐々木はいても立っても居られず父の経営する会社に行った。
「お父さん!」
走りながら叫んだ。父とは死別するまで喧嘩していた。今度は仲良くしたかったのだろう。
「なんだ?どうした騒々しい」
「俺、良い子になるから! 親孝行するから! だから! タバコ吸いすぎないで! 酒もほどほどに!」
恥ずかしい台詞に会社の受け付けもクスクス笑っている。
「は?」
父は呆然とした。それでも佐々木は泣きながら訴えかける。
こうして佐々木は人生をやり直し始めた。だが……。
「お兄ちゃ、あれ?出掛けてるのかぁ……。ん?何このノート?」
これに続きはありません。お好きなように考えてください。