第9話 白虎の優しさ(うさぎside)
怖かった…。
中庭にいたら急に王子が来て…部屋に連れて行かれそうになって……。
けど、アムール様が助けてくれた。
男性の部屋に行くのは怖い…嫌…。
なんとか、王子の部屋に行かなくて済んで良かった。
「寝れないのか?」
アムール様が聞いてきた。
私が暗いのが苦手で、一人では寝れないことを知っているから、心配してくれたのだろう。
「はい…。慣れない環境ですし…中庭の草花を見て癒されたら眠れるかと………。」
「そうか…ならもう少しここにいるか?俺はあの木の下にいる。」
私が返事をする前に、アムール様は移動してしまった。
(お言葉に甘えてもう少しだけいよう。)
草花を見ていると癒される。
ふと気になって、アムール様を見ると…
月明かりに照らされ、白銀の髪を輝かし、優しい顔でこちらを見ていた…。
……えっ………?
見られてた…?
……恥ずかしい…。
顔が桃色に染まるのを感じる。
他の男性なら、嫌な感じしかしないのに……。
(暗くてよかった……。アムール様に、見られてないよね…?私……アムール様のことが……?)
「そろそろ戻るか?」
アムール様に声をかけられ、まだ中庭にいたかったが、部屋に戻ることにした。
「はい…。」
アムール様と歩いた部屋までの道のりは短く感じた。
一人で部屋から出た時は長く感じたのに……。
(アムール様の横は安心出来る……。お父様やお兄様以外には感じたことないのに……。)
「寝れそうか?」
「……はい……。」
(きっとここで、寝れないと言ったら優しいアムール様だから、私に気を使ってしまう……。)
「…フルール嬢さえ良ければ…この部屋からの月夜を見たいのだが…。俺の部屋より綺麗に見えるからな。もちろん、フルール嬢には何もしない。月夜を見たら出て行く。無理にとは言わない。」
(…!?アムール様?………きっと、気を使って下さったのね……。せっかくの申し出を断るのも失礼よね……?)
「えぇ。どうぞ見ていって下さい。…ですが、私は疲れたので先に寝させて頂きたいのです。」
「構わない。俺はいないものとして扱ってくれ。」
「わかりました。では、どうぞ?」
そう言って、二人で部屋に入り、私はベッドへ、アムール様は窓辺の椅子へとそれぞれ落ち着いた。
「アムール様、ありがとうございます。お休みなさいませ。」
「なんのことだ?礼を言うのは俺のほうだろう。あぁ、俺がいてゆっくり休めるかわからないが、休むといい。」
挨拶を交わし、私は寝ようとした。
が、なかなか寝れなかった。
アムール様が傍にいると思うと…ドキドキする…
不安とは違うような…緊張とも少し違うような……
例えるなら、お兄様と遊ぶ約束をした前日のような……
けれど、それとも少し違う……
うまく言えない……。
(お母様がいたら、聞けたのに……。きっと、この気持ちを教えてくれた……。)
お母様のことを思い出し、悲しくなる。涙が瞳を縁取るのを感じる。
「泣いているのか?」
近くでアムール様の声が聞こえた。私が寝ていると思っているかのか、小さく優しく問いかけるような声。
答えたら、きっと泣いてしまう。
私はそのまま寝たふりを続けた。
「泣くな。愛しいうさぎ。俺がお前の傍にいる。守ってやるから…お前の笑顔が見たい…。」
アムール様はそう言いながら、優しい手で涙を拭う。
その手は騎手らしく、剣ダコがあり、ゴツゴツとした男らしい手。傷つけないように、優しく触れてくれる。
涙を拭い終えた手は、そのまま私の頭を撫でる。
優しく何度も何度も…。
その優しさを感じながら、いつの間にか私は夢の世界へと行ってしまっていた。
夢の世界に行く前に、優しい声が聞こえた気がする…
「…お休み。愛しいうさぎ。」
ここまで読んで下さり、ありがとうございますm(_ _)m
第10話は、4月27日(水)14時頃に投稿します♪
少しでも楽しんで頂けたら幸いです<(_ _)>
犬飼 蘭