第18話 うさぎの過去(うさぎside)
私の幼い頃の記憶。
あの日はお母様と出かけていた。
お父様とお兄様とも一緒に出掛けたかったけれど、仕事で一緒に行けなかった。
「私の可愛いプリーシュ。一緒にピクニックに行きましょう。」
「お母様…お父様とお兄様は?」
「お父様とお兄様はお仕事があるから、一緒に行けないの。」
「………。」
「可愛い花冠を一緒に作りましょう。」
私はお母様と近くの湖にピクニックに出掛け、約束通り花冠を作っていた。
楽しい時間を過ごし、お昼ご飯のお弁当も食べ、ゆっくりしていると、馬の足音が聞こえてきた。
「!お母様!お父様とお兄様かな?」
お父様とお兄様が来たと思い、はしゃぐ私。
「どうかしらね?……!!?プリーシュ!こちらへいらっしゃい!」
お母様が異変を感じ、叫ぶ。
私は急いでお母様の傍に行き、お母様の服をぎゅっと掴んだ。
全部で3人の男が馬に乗ったまま近づいてくる。
3人ともよく見てみると、人攫いのようにガラが悪い。
「俺たちといいとこに行こうぜ?」
そう言いながら、男が馬から降りて歩いてくる。
「私たちはもう帰りますの。」
お母様が私の手を握り、男たちの横を通り過ぎようとしたが、私が男に捕まってしまい、逃げられない。
「いやっ!お母様!」
「可愛い女だな。少しぐらい味見してからでもいいよな?」
男に厭らしい不躾な視線で見られ、触れられる。
(怖い…気持ち悪い……)
「娘を放しなさい!」
お母様が隠し持っていた小振りなナイフで男に切りかかる。
「!?女が危ないもん持つなよっ!」
別の男がお母様に襲いかかる。
お母様がナイフで男たちに対抗する。が…
「女は大人しくしてればいいんだよ!」
ーーーブスッ!!
「……っ!………」
男は持っていた剣でがお母様を刺した。
お母様のお腹から血が流れる。
「いやぁぁぁぁっ!!お母様!お母様!」
泣き叫び、お母様に近寄り、すがりつく。
私の服も手もお母様の血で赤く染まる。
「やべっ…。」
「おいっ。そのガキだけでもつれてくぞ!」
男たちが私を連れて行こうと、お母様から離そうとする。
「お母様!お母様ぁ!」
「大丈夫か!?」
知らない男の声と同時に、男の呻く声も聞こえる。
声がした方を向くと、白銀の髪を輝かせた青年だけが立っていた。その青年の手には、赤い血が付着した剣が握られている。
先ほどまで揉めていた男たちは全員倒れている。
その光景を目にした後の記憶がない。
気が付いたら、自室のベッドで寝ていた。
起き上がると、ベッドの端にお父様とお兄様の姿があった。
私がもぞもぞと動くと、二人とも起き、
「プリーシュ!」
私の名前を呼んで抱き付いてきた。
「お父様?お兄様?……お母様は…?」
「可愛いプリーシュ。お前だけでも無事で良かった…。」
「プリーシュ。お母様はな……天国に行ったんだ……」
私の問いかけに泣きながら答える二人。
それからというもの、お父様とお兄様は私を外に出したがらなくなり、私も外に出たがらず、家で過ごすことが多くなった。
外にでると、知らない男性が怖くて仕方がない。
男性が怖くて、余計に家に引きこもりがちになる。
宝物のように大切に育てられ、夜会にも滅多に参加せず過ごしたため、うさぎ令嬢と呼ばれるようになった。
読んで下さりありがとうございます<(_ _)>
第19話は5月7日(土)10時頃投稿する予定です♪
犬飼 蘭




