第13話 うさぎの決意 (うさぎside)
王子は、何かと私に話しかけてくる。
そして、“可愛いうさぎ”と私のことを呼ぶ。
そのたびに、華の令嬢と月の令嬢から向けられる視線が痛い。
華の令嬢は、甘いミルクティー色の髪に同じ色の大きな瞳が可愛らしい。そして、華が咲き誇るような笑顔も可愛らしい。
月の令嬢は、クールな印象。
知的な黒髪に深い紫の瞳が美しい。
そんな魅力的な二人は王子と並んでも違和感がない。
が、私と王子では釣り合わない…。
なのに、王子は私にばかり話しかけてくる。
王子と結婚したい令嬢からしたら、面白くないだろう。
それこそ、華の令嬢と月の令嬢からしたら、面白くないだろう。
王子も、私にばかりに話しかけないで欲しい。
「キャッ…!?」
小さな悲鳴を上げてしまった。
熱いお茶が私の腕と脚を濡らす。
どうやら、華の令嬢がティーカップを倒してしまったらしい。
(熱い……)
謝り、私の心配をする華の令嬢。
心配してくれる王子。
「失礼。」
大丈夫です。と、言う前にアムール様の声が耳元で聞こえる。
そして、私はアムール様の香りに包まれ、抱き上げられていた。
「キャッ…」
「令嬢に火傷させる訳には行かないので、冷やしてきます。」
アムール様が王子や令嬢たちにそう言い、私に囁く。
「もうしばらく我慢してくれ。すぐに冷やす。」
私はアムール様に横抱きにされたまま、お茶会を後にする。
連れて来られのは、騎士団の訓練場。
男の人が苦手な私は、訓練中の騎士にも怯えてしまう。
身体は震え、アムール様に捕まる手には力が入ってしまう。
「すまん。少しだけ我慢してくれ。」
アムール様は近くにいた人に話しかけた後、近くの建物の部屋に入った。
一組の机と椅子、ベッド、タンスがあるだけのシンプルな部屋。
椅子に座らされると、
「団長、失礼します。」
そう言って、一人の騎士が入ってきた。
その手には、水の入った桶がある。
「あぁ、すまん。」
そう言ってアムール様は騎士から桶を受け取り、濡らしたタオルを私に渡す。
「本来なら、流水で冷やした方が良いのだが……。すまんが、これで冷やしてくれ。」
「そんな……ありがとうございます。」
「ドレスも洗った方がいいだろう……。ここには、ドレスなんて洒落たもんはない……。これで我慢してくれ。俺は外にいる。何かあったら呼んでくれ。」
冷やしたタオルと、男性用のワイシャツとズボンを置いて、アムール様は部屋を出て行ってしまった。
(熱いし……ドレスは窮屈だし……お言葉に甘えて着替えさせてもらおうかしら……)
ドレスを脱ぎ、お茶で濡れた足と腕をタオルで冷やす。
騎士団の訓練場で着替えるのも、男性用の服を身に付けるのもはしたないかもしれない……。
どけど、アムール様の心から心配してくれている様子を見て、断ることもできない。
なんて…ただの言い訳。
本当は嬉しかった。
アムール様の素顔を垣間見ることができた。
心から心配してくれた。
アムール様の傍にいたいと思ってしまった。
私は…アムール様に恋心を抱いてしまった…。
優しいアムール様。
だけど、私が妃候補だから優しくしてくれている…。
私への想いなんて……きっと無い……。
私の我が儘かもしれないけれど……
私の我が儘だけれど………
アムール様の傍にいたい。
アムール様の隣は、安心できるし、勇気を貰える。
この服からは、アムール様の香りがする。
アムール様に包まれているようで安心できる。
この香りから離れたくない。
だけど……
私は王子の相手…妃候補としてここにいる。
他の男性に恋をした。とは言えない。
アムール様とは結ばれない…。
騎士団長…白虎将軍のアムール様。
彼が傍にいれば、何だっててきる。頑張れる。
……妃になったら、傍にいれる?
王子には申し訳ないけれど…
私はアムール様の傍にいたい。
ならば……私は彼の傍にいるため、妃になる。
読んで下さりありがとうございます<(_ _)>
第14話は5月3日(火)10時頃投稿予定です♪
犬飼 蘭




