はじまりの月曜日
楽にサクッと読んで頂けるとありがたいです。
――金曜日――
『――まもなく6番線に――』
「やめろぉぉ! 付いてくるなぁぁぁ! 俺の前から消えてくれぇぇぇぇ!!」
会社員、学生で溢れ返っている朝のラッシュ時のホームを、叫び声を上げながら走り抜ける男。
人や物にいくらぶつかろうがその男の足が止まることはない。
「ハァ……ハァ……なんで……なんで俺なんだよぉぉぉ!?」
息を切らしながらも叫ぶ。
己の疑問を“相手”にぶつけるかのように……。
「……しね! ハァ、ハァ……死んでくれぇぇぇぇ!」
そんな男の顔には鬼気迫る表情が深く刻まれていた。
「もう勘弁してく……アァァァァッ!? ………………」
――そして男は勢い余ってホームから転落し、進入してきた車両に轢かれ……絶命した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――遡ること4日前の月曜日――
「あの、すみません」
通勤、通学ラッシュで混雑する駅のホーム。そんな息の詰まるような人混みの中で意を決したような神妙な面持ちで女は言った。
――だが相手は女の言葉に気付くことなくその歩みを継続し、その姿は瞬く間に人混みに紛れていった。
「……明日こそは……」
底冷えを孕んだ声音でそう口にした女は、自身も“勤務先の本店”に向かうため歩みを進めたのだった。