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人外フレンズ  作者: fukenkou
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狼男

人外と生活していたらどうなるだろうと思って想像したものです

展開早いです

その日は土砂降りの雨で休日だった


私は本屋の帰りに雨に見舞われた、天気予報は30%と言っていたけど降っている雨は道に勢いよく叩きつけられて少し溢れてきている

こうなると知っていたら出かけなかったのに、もう靴の中はぐしょぐしょだ

今日の天気予報は降る確率だけじゃなくて雨の強さも教えておくべきだった

私はこれ以上は傘を差していてもどうせぬれると思ったから小走りで帰ろうとした

しかし、こういう時に限って信号は赤になる


じれったい思いをしながらも傘から落ちる滴を無意識に眺めて待っていると後ろの路地から何かが崩れ落ちたような音がした不気味に思ってチラッと振り返るとゴミ箱の陰に隠れて何か尻尾のようなものが見えた

まさかと思ってのぞいてみる


「でかい・・・・」


そこには薄汚れたずぶ濡れの大型犬が瀕死の状態で倒れていた

ふさふさの毛で体は大きく見えるが四本の脚は棒のように細くなってしまっている

これではもうこの先長くはないだろう


私は信号を渡って家に帰った








++++++++++



空腹で体が鉛のように重い、冷たい体は熱がほとんど残ってなどいなかった、頑丈だった身体は今は見るも無残な姿になって強さなど微塵も感じない


最近身近に感じていた死の匂いも近づいてきているようだ


長い人生だった、決して歓迎されるようなものではなかったが生きている瞬間はそれなりに謳歌していたし悔いもなかった

自分の運命はここで終わるように設定されていたのだろうと諦めて意識を手放した

ほのかな温かみを背中に感じながら.........




++++++++++





片山みやは家に帰ってすぐに毛布とバスタオルを準備した、大きめの段ボールのような箱の物がほしかったが家にはなく、仕方なく再び雨の中を飛び出した


さっきと同じ場所でぐったりしている犬を見てさっそくタオルで体をサッと拭いて包んでやった

普通の犬に比べてやけにでかい犬種のようだ、ひょろひょろに細い身体になってしまっているのにバスタオルから足がはみ出している

本当はかなり大きかったはずの犬は可愛そうなほどに衰弱して体毛の上から触っても骨が浮き出ているのが分かる


何とかして抱き上げて腕の中にぎりぎりな形でそのまま連れて帰った





大急ぎでお風呂場に駆け込み、シャワーで汚れを落ちる分だけ洗い流して母に頼んで病院へ大急ぎで連れて行った


そのままいろいろあってドクターに犬を預けて二週間ほどしたのちに安静な状態になったという知らせがきた


ずっと気になっていただけに学校から帰ってすぐの私の反応はよかった

再び車で病院に向かうとこの前より肉付きのいい体になっていた

しかし、未だに目を覚まさないらしく、あくまで安定期に入ったから連れて帰ってめんどうを見るかどうか決めてほしいとのことだった


入院代も馬鹿にならないということでトラブルにならないようにドクターは選択肢を与えてくれたようだ

母はどちらでもよかったそうだがやっぱりここはできるだけ負担はかけられないと判断して連れて帰ることにした

今後は絶対安静で目が覚めたときのはどうするのかということを教えてもらってこのあとの代金の支払いを見て母と目を合わせてしまった

入院続けなくてよかったとか内心思った、ごめんワンコ不謹慎だ




家に帰って早速毛布を敷いたりしてこれ以上冷やさないように努めた


それから数日して休日がきた、家族は全員出かけて私は家でテレビを見ながらお留守番をしていた、夏の特番「夢の星空特集」を見ながら麦茶を飲んでいた時のこと


ふと気になってワンコの方を見ると肉眼で見ると一瞬だったが足がピクリと動いた!

私はすぐさま立ち上がりそばまで駆け寄った


近くなるとかすかに動いて呼吸が早くなっている、もうすこし、もうすこしで……


「頑張れっ!」


思わず出てしまった掛け声に反応したのかそうじゃないのか耳がピクリッと動いた、その瞬間、固く閉じられていたワンコの目がゆっくりと開かれた


「やった!目が覚めた、良かった……」


安堵のため息を吐きながら床にお尻を付けて座り直し、何とも言えない達成感に、安堵感に身を任せた

みやが安心しきっていると、突然ワンコがふらつきながら立ち上がった

いきなりの事に驚いたが、みやは制止を掛けなければと思った


「今立ち上がらない方がいいよ、ゆっくり寝ときなって…」


そう言って寝かせようと手を伸ばしたとき、違和感を感じた

珍しい赤色の視線が敵意を含んでいるような気がする

燃えるように真っ赤な目はこちらを見たまま動かない、代わりに顔の中心の皺が濃くなっていく、威嚇されているのだろうか


「ご、ごめんごめん、急に驚いたでしょ、目が覚めたのも久しぶりだもんね、」


ダメだ、友好的に行こうとしてもそもそも相手が鼻からそんなつもりがないんじゃどうしようもない、最悪だ


しかも追いつめるかのごとく近づいてきた、私は同じ目線でいることに不安を感じて立ち上がった、その間にも距離を詰められる


(どうしよう、噛みつかれたら痛そうだな、しかもやっぱり、でかい……)


みやが立ち上がってもお腹のあたりまでありそうな大きさだ、よく抱いて帰れたよなー私

後ろに下がりながらそんなことを考えているうちに犬は距離を詰めてきている


遂にみやはソファにつまずいてそのまま座る体制になってしまった

それがきっかけで目の前の犬が勢いよく飛びついてみやの上に乗り移った、圧倒的恐怖で身構えるしかできなかった


助けた犬に報復されるとは、私もなかなかに運がない……

お母さん、お父さん、お兄ちゃん、こんなことなら一緒にお母さんのお買いもの地獄に行っていればよかったそしてついでに欲しいやつを紛れさせて買って貰えば……





あれ?何も起きない


そろっとガードした腕から覗いてみると大きな顔がいきなり目の前にあった

わっと声を上げて再び目を閉じた、匂いを嗅いでいるのかひんやりと冷たい鼻らしきものが腕にあたって少しくすぐったい……

食べようとしているのか、調べているのか、どっちでもいいけど早くどいてほしい、恐怖で死ねそうだ。


半パニック状態で恐怖に慄いていると低音の耳に優しい声がかけられた



「俺を助けたのはお前か?」




……え?


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