表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

7 脱出

そこから先はあまりよく覚えていない。


屋敷のご主人がなにか叫んでいた気がする。

カミューリはドールガに駆け寄り肩を貸し、少女を連れて屋敷を出た。

途中何人かの傭兵や倒れた大男のようなヤツもいたが、どうやって逃げたかは定かではない。


気がついたら街の郊外、川の畔に来ていた。

ドールガを寝かせ、少女を座らせたカミューリは呼吸を整える。

「ハァハァ・・・もう、大丈夫・・・」

にっこりと少女に向かって言う。少女は安心したのかカミューリの顔を見た途端また涙があふれて来た。

「大丈夫。何もないから。もう、何もされないから」

少女を抱きしめ、頭を撫でて囁くように優しい声を掛ける。

「・・・カミューリ・・・」

寝ているドールガが苦しそうにカミューリを呼ぶ。

少女を抱きしめたまま、ドールガに近付き手を取るカミューリ。

「ドールガ、ありがとう、来てくれて・・・」

ドールガの右手を握りしめ、何度もお礼を言う。

「無事、だな。あぁ、また傷が増えたな、顔を上げてくれ」

ドールガの左手がカミューリの頬に当たる。

沢山の涙を流すカミューリの顔はとても汚れていたが、その汚れを拭うようにドールガはカミューリの顔を撫でた。

起き上がろうとするドールガをカミューリは必死で支え、少女とともに何度も何度もありがとう、ごめんさいと呟いた。

「そんなに謝らないでくれ。一人にしたオレが悪かったんだ」

優しく、微笑みかけるようにドールガは言う。

少女が傍らで二人を見つめ心配そうにしている。それに気付いたドールガは少女の頭を優しく撫でてやる。

「助けるつもりが助けられたんだな。ありがとう」

少女はドールガの顔を見てまた泣きそうになったが堪えて、笑った。

つられてカミューリも笑った。

ドールガも。




ドールガの痛みが引くのを待ってから、三人はいつものボロ小屋に帰った。


「カミューリ、コレを」

ドールガが差し出したモノは真っ白い布だった。

「何?包帯?」

それを受け取りカミューリは広げてみた。

「わんぴーす?」

驚いた表所のカミューリ。隣で目をキラキラさせてワンピースを見つめる少女。

「きれい・・・」

少女がぽつりと呟く。カミューリは少し困ったような顔をしてドールガに視線を投げた。

「えっと・・・これは・・・?」

「似合うと思って買って来たんだ。気に入らないか?」

ドールガが少し照れたような顔でカミューリを見る。

「・・・ありがと、うん。嬉しい、かな」

ワンピースを見つめて自分に言い聞かせるようにカミューリは呟く。

「気に入らなかったか?」

ドールガの表情が不安な色に染まる。

慌てて顔を横に振り否定するカミューリ。

「違うよ!すごい嬉しいよ!でも・・・」

「でも?」

少女とドールガは同じような不安な表情に変わった。

「でも、私・・・おとこなんだよね・・・」


そこから先は大変。

驚きすぎて脇にチカラが入ったドールガは床に転がり回るし、少女もそんなドールガを見て泣き叫ぶ。

痛みと驚きで分けの分からない事をぶつぶつ呟くドールガはとても不気味で。それをなだめるカミューリもよく分からない事を言い訳のように必死で話す。

まさに阿鼻叫喚。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ