5 極上
地下
少女が連れて行かれてから数十分。いや、数時間経ったのだろうか。
この部屋では時間の感覚も感情さえも認識できなくなってしまう。
ここにいるすべての子供は微動だにしない。
恐らく自分たちがこれからナニをされるのか、ナニをするのか何となく分かっているんだろう。
出来るだけ息をひそめ、気配を消して明日の命に繋ごうと皆必死だ。
(バカみたい。どうせ皆死ぬのに)
鉄の扉の直ぐ横の壁にカミューリはもたれ掛かっていた。
泣きつかれたのか吹っ切れたのか、カミューリは他の子供達とは違い顔を上げ、天井を見つめている。
(大人なんか大っ嫌い。汚い。臭い。気持ち悪い)
ガチャ
鉄の扉が開かれた。
日に2度も明けられる事は珍しい。
1度目から然程時間も経っていないのに。
「まったく、商品に逃げられるとはな。お前も灼きが回ったな。まぁ逃げ切れないとは思うが」
入って来たのはさっきの大男とカミューリを連れ去った初老の男だった。
先に初老の男が部屋に入り、コツコツと杖を鳴らしながら子供を物色し始めた。その後ろを無言で大男が続いた。
初老の男は近くの子供の顔を杖で持ち上げ叩いたりしている。
それを無表情で見つめるカミューリ。
(逃げられた・・・。あの子、逃げたのか。バカだな)
「ふんっ、どいつもこいつも価値が知れてる。ここは極上部屋じゃないのか?こいつもこいつも!まったく大した価値ではないな!」
子供の頭を杖で殴りながら、息を荒げている。
足下で必死に声を押し殺し耐えている子供が痛々しい。
ふと、初老の男がカミューリを見つけた。
「ふむ・・・お前は、逃げ出したやつだな。よく見ればそこそこの価値がありそうだな」
グイッ
杖の先でカミューリの顎を持ち上げ品定めをする。
「・・・極上にはほど遠いが、まぁいいだろう。こいつを連れて行け」
初老の男は大男に顎で上に上がるように合図する。
大男はゆっくり頷くとカミューリの腕を掴み引きずりながら部屋を出る。
「早くしろ、ご主人様が待っておられる」
大男は足早にカミューリを引き連れ上に上がる。