3 願い
地下
薄暗く、冷たい空間。
カミューリは着ていた服が剥がされ元の薄い下着のような服になっている。
幸いな事に包帯はそのまま巻かれている。
「・・・また、ここか」
一人ぽつりと呟く。
何人かは反応したがすぐに俯き顔を隠してしまった。
この部屋にはざっと10人程の子供がいた。
見知った姿の子供はいない。
みんな死んじゃったのかな。
買われた子供は散々傷つけられて、壊される。
心も身体も。
ガチャ
重い鉄の扉が開いた。
そこに、カミューリを連れ去った大男が立っていた。
大男は鞭を振り回し、一歩一歩ゆっくり中に入って来た。
男が近くを通る度子供達は後ろに下がる。
品定めをするような目つきで一人一人を観察する。
(お願い、ここにはこないで)
男と視線が合わぬよう、他の子供達と同じように俯き顔を隠すカミューリ。
何歩目かの足音。
カミューリの直ぐ脇で足音が止まった。
(神様!)
「いやっ!」
手を引かれ、ズルズルと引きずられたのはカミューリの直ぐ近くにいた子供だった。
年端もいかない、幼い少女。
髪は長めのストレートで栗毛の可愛らしい娘。
「やめて!助けて!許して!」
泣きながら懇願する少女。
悲痛な叫びは牢屋のようなこの部屋に響き渡る。
他の子供はまったく動かない。耳を劈く少女の悲鳴も聞こえないように。
「たすけて!」
抵抗する少女の手がカミューリに助けを求めた。
自分より1か2、年下の少女のか細い手はカミューリに届かず遠のいて行く。
重い鉄の扉が閉まる音と同時に悲鳴も消えた。
静まり返った部屋の中、カミューリはゆっくり立ち上がり鉄の扉に近付いた。
「・・・だして」
無機質で冷たい鉄の扉に手を当てながら呟く。
「ここから出して!」
力一杯に叫ぶ。
有らん限りのチカラを拳に込めて扉を叩く。
ビクともしないのは分かっている。
それでも、何度も扉を叩く。
「ここはいや!もうこんな所には居たくない!」
強く握りすぎた拳からは血が滴り落ちている。
それでもかまわず、扉を叩き続ける。
「お願い!帰して!私を、ドールガのところへ、帰して!!」
嗚咽まじりのその声は扉の向こうには届かない。
「・・・お願い・・・」
「その子を、助けて・・・」