序章 逃亡
過去に友人へ原案提供した作品のスピンオフになります。
これ単体でも読めるので投稿しました。
薄暗い森の中
日は傾き始め、冬の冷たい風が頬を打ち付ける。ここは寒い。
裸足の子供にはここの土は冷たすぎる。
「もう、追ってこないよね・・・」
子供は赤い鼻を鳴らし、手に息を吹きかける。
気休めにしかならないが、一瞬だけでも暖かさが欲しかった。
薄いシーツ一枚でとにかく冷えはじめている体を隠す。
風は容赦なくシーツを通り服をすり抜けその身に冷気を吹き付ける。
「もう、ダメかもしれないなぁ・・・」
かじかむ手をぎゅっと握り凍傷になりかかっている足にキツくシーツを巻く。
屋敷を出てから、追っ手を気にしつつどれくらい走っただろう。
既に体は満身創痍だ。
夜になれば此処はもっと寒くなる。
「このままじゃ、私死んじゃうかな・・・」
あんなところで死ぬくらいなら、この森で死んだ方がマシかも。
手も足も感覚が無い。
吹き付ける風に木々が揺れる。その音がまるで子守唄のように子供の耳に届いた。
意識が遠のく。
子供は静かに目を閉じ、自らの運命を神に預けた。
もし神様が居るなら、明日、私を生かしておいて下さい。
出来ればおいしい食べ物を下さい。暖かい灯がともる暖炉を下さい。
そして・・・
この街を、大人を消して。