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作者: 三月うさぎ

そこに座っていたのは、かつて私を柔らかに抱いてくれたふっくらとした母ではなく、目も虚ろにやせ細った女でした。


箸が上手く使えないので、食べ物を食べることもままならず、物を飲み込めないので、食べた物を吐き出してしまうことさえありました。


私はそんな様子の母が痛々しく、とても見ていられないので、隣で黙々と米を口に運ぶばかりでした。


物事を理解する力も衰弱し、傍らに置いてあった寿司醤油に気がついていなかったようなので、袖が醤油に浸ってしまっていました。


軽く肩を叩き、醤油の皿を示しましたが、その服越しに触った肩のか細いこと。


あんなにも肉のついた肩は、今では骨と皮ばかりになってしまっていたのです。


居たたまれなくなって、急いで残りの米を口に押し込み、御馳走様と呟いて、勉強をするからと、足早に階段を降りました。


勉強机に向かい、シャープペンシルを持ち、幾つか数学の問題を解きながら、泣きました。


母が死ぬことが悲しかったのではないのです。


あの頃の母がもう戻らないことに、泣いたのです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでいて、私までなんとも言えない、居た堪れない気持ちになりました。 時には逆らえない物ですね。
2012/11/23 21:08 退会済み
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