ダンジョン経営歴100年に突入しました。
私、花本愛は現代から異世界へと神様のお誘いにのって喜んでトリップした元高校生だ。現在の職業はダンジョンを作成する魔人。
ダンジョン経営歴100年目に突入した。
私が経営しているダンジョンは、『黒き死の森』なんて呼ばれてる難易度Sランクのダンジョンだ。調子にのってこの100年で冒険者殺しまくって、レベル上げたからね。
神様は地球から沢山の人を連れてきた。私みたいに現代の社会に飽きて喜んでついてきた者もいれば無理やり連れてこられた子もいるんだ。私を連れてきた神様って人間で遊ぶの大好きなの。だから、ダンジョンを作らせて、色々見てるんだ。冒険者の末路とか、私たちダンジョン経営をする魔人の末路とか。
いい性格してるよねー、神様って。
神様って優しくて、レベル制度いれてくれてるからステータス見れるし楽なの。
最初の頃は、初期ダンジョンだからって甘く見てる冒険者が沢山来て楽だったのに、今では難易度Sだから凄腕の冒険者以外来ないのよね。だから眷属のモンスターに外で狩りをやらせたり、わざわざ自分で町までいって他のダンジョン攻略しにいったりしてるけど。
え、そんなのいいのかって。いいにきまってるじゃない。神様もいいっていってたし。私って面白いらしいよ、神様にとって。
ダンジョンってね、核である宝石をとられたら消滅しちゃうの。
だから他のダンジョンの人達ってダンジョンのマスター室って呼ばれる空間に閉じこもってる人結構多いのよ。流石にマスター室以外からダンジョンは操作できないもの。MPを使って色々ダンジョンを組み替えたりするのよ。宝石をとられないように。
神様はね、数百年に一度異世界から連れてきた者で魔人をつくるの。そしてダンジョンを作らせて、神様に憎悪を向ける存在の滑稽さとか、冒険者たちの無様さとか見てるの。
そういう、苦痛に満ちた生物見るの大好きなんだって。特に人間とか知能ある生物は特に楽しいって神様言ってた。
私はレベルもすっかりかなり上がってる。それに優秀な私を裏切らない眷属が居るから結構外に出るの。人間とかエルフとかも、眷属に出来るのよ。裏切られて捨てられたエルフの少女が私の眷族にいるの。従順でもう50年もの付き合いなの。それ以外の眷族は全員モンスターなのだけれども。
あ、魔人は不老なの。不死ではないけど、不老なの。
今日は、マスター室でゆっくりとする予定なの。暇だから娯楽を求めて本とか買いあさってるけど、私って一見すれば人間だから誰も気付かないのよね。面白いわ。
今日手に取ってる本は、過去の英雄のお話よ。
ドラゴンを退治した英雄の話。こういうファンタジー好きよ。でも倒されるのは嫌だから私より強い英雄なんていらないわ。
真っ白なベッドでごろごろと寝転がっている。マスター室の部屋結構作ってるのよ。此処は私の自室。沢山の本が並べられた本棚があって、真中に机が置いてある。マスター室はある意味現実とは別次元の空間で太陽の光なんてないけど似たようなものを作ってそれで照らしてあるから温かな光が照らしていて、明るいの。
そんな中で、ピコーンピコーンと頭の中で何かが音を鳴らした。
「おぉう、忘れてた。神様とお話する予定だった」
神様とお話をするなんて大事なことを忘れてたなんて私の一生の不覚だ。神様は数少ない私の友人のような存在だと言うのに!
「ほいー、もしもし」
ちなみに頭の中に響いてるのは念話というものだ。ピコーンピコーンというこの音は神様のお茶目心から生まれた念話の前触れである。
『おおー、愛元気か』
「元気ですよー。神様。つい先日も私のダンジョンを攻略に来た冒険者を殺した所ですよー」
『愛はよくやってるな。同時期に来た奴らはほぼ消えてるってのに』
「ふふー、私が消したのも結構あるよー」
『そういえば、愛がダンジョン潰して回るからって同盟組んでた奴らもいたもんな』
「そうだねー。ふふふ、あの時五人もいっぺんに魔人を相手にして殺したから経験値がホクホクだった」
無理やり連れてこられて殺しに罪悪感を覚えてた同郷の連中が五人も手を組んで私を殺そうとしたのよ。まぁ、ダンジョンを攻略して同じ魔人を殺して反省も何もしてなかったから危ないと思われたんだろうけれど。
でも、別にいいじゃない。仲間でも友達でもないもの。この世界は弱肉強食だもの。弱いものは死ぬの。シンプルで、私はこの世界が好きよ。
『あと五十年ぐらいしたら新たな魔人作る』
「おー、後輩出来ちゃう? 面白い子いればいいなぁー。後輩を可愛がっちゃおうかなぁー? 現実は甘くないよーって。でもやるならダンジョンをある程度強くしてもらってからにしないとな。経験値入ってこないし」
『おー、それはなんか楽しそうだな。俺、見物しとく』
「神様は本当好きだね、見物」
『だって楽しいだろ。無様に死ぬ姿とか、人間って予想外の行動もするしマジウケル』
「ふふふ、神様、私が仲良くしといてぐさりってやった時爆笑してたもんねー」
『だってあの顔傑作だろ。信じられないって目で愛を見てるんだぜ?』
ベッドに寝転がりながら、頭の中に響く神様の声にこたえる。
私ね、騙し打ちで殺したこともあるの。宝石を奪う以外でも、魔人本体を殺すこともできるからね。
出会ってたった3カ月で私を信用してマスター室にいれてくれた子にぐさりっと出来心でやっちゃった。だってねー、何て言うの。凄い正義感に満ちてて、神様に無理やり連れてこられたから復讐するっていってたの。神様は私にとっておしゃべり仲間だからなんかなぁ、って思って気がつけばぐさりっと。
でも、たった3カ月で信用したあの子も悪いわ。だって、たった3カ月で私の全てを知った気でいたみたいだもの。
「神様、いい性格してるぅ!」
『愛もな。これからも俺を楽しませろ』
「もちろん、ウエルカムだよ! 神様!」
もちろん、私は喜んで答えた。そのくらいならお安御用である。寧ろ自分でも楽しいから全然苦じゃない。
『本当お前楽しんでるよな。他の連中と違って』
「だって楽しいもん。寧ろこの世界に誘ってくれてありがとう、神様ーだよ」
『おお、もっと感謝しろ』
「うん、私神様、愛してるって言えるぐらい感謝してる」
『……そうか』
「神様照れてる?」
『……少し』
「神様、邪神様だもんねー。嫌われ者だもんねー。だからこんなこと言われた事ないんだー」
なんか照れてる声色にニヤニヤした。
そう私をこの世界に連れてきた神様は、邪神・ヨルムノ様なの。神様は世界を滅ぼすなんて事はしないけど、いつも人間とかで遊んでるから嫌われての。私からすれば凄い面白いんだけど。
『ええい! ニヤニヤするな!!』
「ね、神様。本体こっちよこしてよー。お茶会しようよー。レルナも加えてさー。ガールズトークに神様加えてあげるからさー」
レルナってが私の眷属のエルフの少女ね。いい子なのよ。今も私がごろごろするからってダンジョン見ててくれてるの。
『……行ってやらんこともない』
「じゃあ、おいしいお菓子とか用意しとくね? いっぱーい話そうね、神様」
本当神様って面白いの。邪神で友達とかいたことないみたいで、何か残酷なのにちょっと可愛い。
『……行く時連絡する』
「うん、してねー」
その後、しばらく喋って念話は切れた。ちなみに切れる時の音はシャラランッシャラランッである。特に意味はない。神様の遊び心だ。
―――さて、おいしい紅茶とお菓子を神様のために仕入れるとしましょうか。
(ダンジョン経営をしながら、神様とおしゃべりをするのは楽しいです!)
花本愛。
元現代人女子高生だったけど、邪神の誘いに喜んで乗った色々変な子。法律ないんだし、弱肉強食だしって事で躊躇いのない怖い子。
邪神に面白がられてておしゃべり仲間となり果てている。
というか、邪神に懐いてる。
ダンジョン『黒き死の森』のマスター。ダンジョン経営歴100年突破。
邪神・ヨルムノ
色々酷い。他人の不幸は蜜の味。ダンジョン作らせて遊んでる。
愛は面白いからおしゃべり仲間。
世界を滅ぼすなんて事はする気はない。遊びたいだけ。自分では手を下さない(そっちのが面白いから)。
ボツタイトル候補は『邪神様といっしょ!』でした。
容赦ない二人で割とほのぼのした会話になってたらいいなぁー…。
ダンジョン作成要素皆無になった気が…。すいません。
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