猿も木から落ちる
彼女は努力家だった。
登校してから、授業中も、休み時間も、給食の時間さえも、いつでも勉強をしていた。
テストのほとんどは満点で、中学の定期テストでは常に彼女が一番だった。
でも、そんな彼女が一度だけ98点を取ったことがあった。その時の彼女の表情は、まるで世界が終わったかのようで、その場に立ち尽くしていた。
次の日、彼女は全身に痣をつくって登校してきた。それでも彼女は何も言わず、黙って席に着き、いつものように教材を開いた。そんな彼女に、教室の誰も声をかけられなかった。
そして、高校受験の時期が訪れた。皆が彼女のように勉強に没頭し始めたが、最後まで残って勉強していたのは、やはり彼女だった。全校生徒の中で、誰が一番勉強しているかと問われれば、誰もが彼女の名を挙げた。彼女ほど努力した者はいないと、誰もが思っていた。
高校の合格発表の日、掲示板の前には人だかりができていた。その中には、彼女もいた。番号が張り出されると、歓声と悲鳴が交錯した。
喜びを隠しきれず、近くの人と抱き合う者、泣いて膝から崩れ落ちる者。そんな中で、彼女はただ黙って立ち尽くしていた。
震える手に握られた受験票を覗き見て、掲示板を何度も見返したが、彼女の番号はどこにもなかった。
やがて人々が去り、彼女はひとりになった。雨がポツリポツリと降り出しても、彼女は空を見上げることもせず、ただただ呆然としていた。
その時、僕は思った。
『猿も木から落ちる』というが・・・・
ーーーー落ちた猿は、一体どうなるのだろうって。
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