隣の芝は青い
友人のAくんは、一言で言えば秀才だった。
勉強ができて、スポーツ万能で、誰からも好かれている。
それに比べて僕は、毎日友達とゲームばかりして、宿題はいつも後回し。
そのせいで、よく先生からは「Aくんを見習いなさい」と怒られた。
最近、「隣の芝は青い」という言葉を知った。
それで言うなら、僕にとってAくんの芝は、それはそれは美しい人工芝だった。
しっかりと整備されていて、一面が鮮やかな緑色だった。
それに対して、僕の芝は、それはそれは汚い天然芝だった。
至る所が踏み荒らされていて、一部枯れているところもあった。
僕は彼に嫉妬した。
そんなある日、彼と話す機会があった。
「Aくんは良いよね。勉強もできて、運動神経も良くて。Aくんが羨ましいよ」
すると、Aくんは少し悲しげな表情で言った。
「そうかな。僕からしたら、君のほうが何十倍も羨ましいけどね」
意外な答えだった。
「僕には、一緒にゲームする友達も、放課後に遊びに誘ってくれる友達もいない。それに比べてどうだい、君の周りには常に人が集まってくる。勉強ができなくても、運動ができなくても、みんなが君を助けてくれる。僕は、君が羨ましいよ」
彼の芝は美しかった。だから、みんなはその芝を荒らさないように遠くから眺めていた。
僕の芝は汚れていた。だから、みんなはそこに集まった。
隣の芝は青い。
僕から見た彼の芝は青いのに、僕の芝は青くなかった。
でも、彼から見た僕の芝は、僕が見ている彼の芝以上に、青く見えているのかもしれない。
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