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9. 天野 律の宣言

俺、天野 律は自分を天才だと自負している。勉強、スポーツ、文芸などにおいて俺の右に出る人間なんて存在しなかった。でも昨日、認められたのは俺でなく湊だった。唇を噛み締めた。この感情は初めてだった。

「悔しい…。」


湊は帰りの準備をしている。新からのテストを無事に終え、ホッとしていた。

(認められた。僕の努力が…。)

無意識にガッツポーズをしてしまった。それに気づくと湊はすぐに握り拳を緩める。そこに律が現れた。

「湊。ちょっといいか?」

湊は律の低い声にビクッとしてしまった。

「な、何?」

律は俯いていた頭を少し上げ、湊に話し始めた。

「今年の文化祭、なんのパフォーマンスをやるか知ってるか?」

唐突に"文化祭"という単語が出てきて、湊は少しドキッとした。

「全部で3つ。イリュージョン、デスホイール、そしてジャグリングだ。」

「デスホイール?」

湊はサーカス部に入ってまだ一週間とちょっとである。知らないのも当然である。同様に律もだ。

「俺もそれはよく知らない。でも、俺が言いたいのはそこじゃない。ジャグリングは1人でやるものだ。だから、この部活から1人だけ選ばれる。」

去年、湊が見た乙葉のパフォーマンスはジャグリングであった。湊はジャグリングに対して特別な感情があるのは間違いない。

「俺は湊、お前を見下してた。」

湊は律を黙って見つめた。もし、律がふざけて言っているのならつっこんでいたかもしれない。しかし、律の表情からそんなものは見えてこない。

「でも、今日、俺はお前に負けた。だから、俺と勝負しろ、湊。文化祭でのジャグリングのパフォーマーの権利を賭けて。」

「そんなことしてなんの意味が…」

「俺はどんなことにでも負けたことがなかった。でも負けた。だから俺はお前に完全勝利したい。だから、勝負してくれないか?」

湊の意見を遮り、律は自分の意見を貫き通した。湊は数秒黙ったがすぐに答えを出した。

「…わかった。」

律はその返事を聞くと、真っ直ぐ湊を見て言った。

「ありがとう。」

律はそう言い残し、部室を出た。


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