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8. 佐久間 新の試練⑤

テスト当日の朝、湊は太陽の眩しさで目を細めながら登校していると話しかけられた。湊の幼馴染である幹太だ。

「よっ、湊。なんか眠そうだな。昨日の夜何かしてたのか。」

幹太はニヤニヤしながら、湊の方を見た。

「ちげーよ。ただ寝れなかっただけだよ。」

「ふーん。で、部活はどうなんだよ。俺は紅白戦でハットトリックさ。」

幹太はピースしながら話した。幹太と湊は小、中学校で同じチームでサッカーをやっていた。しかも、幹太は県代表に選ばれるほどの実力だ。

「さすが幹太だな。」

「ほんとはお前にもサッカーやって欲しかったんだけどな。」

幹太は湊の入学が決まってから結構な頻度で「サッカーをやらないか。」と誘っていたのだ。

「しょうがないだろ。夢ができちゃったんだから。」

「お前が言ってる夢ってなんだ?」

幹太は気になっていた。湊はサッカーが嫌いというわけではない。むしろ好きだ。そんな湊をサッカーの道から外してしまった夢とは何なのか?と。

「…内緒だよ。叶ったら教えてやらんこともない。」

人に夢を話すのは恥ずかしいというか、なんか難しいものである。

「なんだよー。まあ、いっか。そんときが来たら教えてくれよな。」

「ああ、そうだな。」

そのまま湊と幹太は話を続けながら学校へと向かった。




僕は退屈な授業を受け終え、部室に向かう。足がほんのり重かったような気がする。部室に入るとそこには佐久間先輩が1人で仁王立ちしていた。僕の頬に汗が流れる。その直後、律も部室に入ってきた。僕と律が揃うと佐久間先輩は話し始めた。

「じゃあ、…テストをする。」

正直、佐久間先輩の声は聞き取り辛い。それは律も同じだろう。佐久間先輩はボールを3つずつ僕と律に差し出した。

「まず天野。」

「はーい。」

律はボールを3つ持ち、テストを行った。結果から言えば成功である。でも、僕が初めて見たときとあんまり変わっていないような…?

「次、神木。」

失敗、ミス、マイナスな要素が僕の頭を駆け巡る。でも、動じない。乙葉先輩からの期待、助言、それに応えるべきという信念がある。ボールを高く上げた。左手でもう一個のボールも上げ、回転しながら脇の上でボールを取る。

(見過ぎるな。でも見ろ。)

そのまま回転を終え、全てのボールが僕の左右の手に入ってきていた。


湊がテストを終えると新が話し始めた。

「俺が見たかったのは…努力量だ。神木、お前はものすごい成長をした。しかし天野、お前は成長していない。」

律は「は?」とでも言いたげな顔をしている。「俺が試練を与えたその日、俺はお前らの練習を見ていた。天野、お前にはセンスがある。最初からこのパフォーマンスができるのは乙葉、もしくはそれ以上かもしれない。でもお前は練習を怠った。だから何も成長をしなかった。」図星なのか、律は黙ったままである。

「一方で神木、お前はものすごい成長をした。正直、ここまでやるとは思ってもなかった。」

湊は喜びを噛み締めた。

(よし、よしよし、よっしゃ!)

律は唇を噛み締めていた。

(くそ、くそくそ、くそが…)

「サーカスにおいて大事なのはセンスじゃない。努力だ。」


そしてそのまま部活の時間が過ぎていった。

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