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6. 佐久間 新の試練③

「乙葉先輩、これって練習場ですか?」

湊は乙葉の家の中に入り、驚愕した。湊は無意識だろうが、少し口が空いていた。

「あはは、湊君、口空いてるよ?」

乙葉はクスッと笑うとそう指摘した。湊は意識的に口を閉じた。

「この家はさ、私の親が買ってくれたんだよね。私の親、私に甘いからさ。」

「そうなんですか。でもなんで僕をここに連れてきたんですか?」

「湊君、新に出された課題ができてないって言ってたじゃん?だから私が教えてあげようと思って。迷惑だった?」

「いえ、教えてもらいたいです。」

湊にとってこの提案はとてもありがたいことである。自分ではどうやってもできないのかもしれないと諦めかけていたのだ。

「じゃあまず私が手本を見せるから見てて。」

乙葉はボールを3つ持ち、左手に2つ、右手に1つに分けた。その後、右手にあったボールを高くあげ、左手にある1つのボールを低めに上げると、乙葉は低めにあげたボールを右手でキャッチした後、1回転しながらもう1つの方のボールを脇の上でキャッチをした。律の動きはできているとはいえ、無駄な動きが多かった。しかし、乙葉の動きには無駄がなく、指先までが美しく感じられた。

「乙葉先輩、なんで課題の内容知ってるんですか?」

乙葉には課題の動画を見せてはいない。湊は疑問をぶつけた。

「え、えっとねー、うん、なんとなく新がどんな課題出すか分かってたんだよ。」

乙葉は、目線を少し逸らしたが、すぐに港に戻した。

「とにかく、湊君も一回やってみてよ。どんな感じか見たいし。」

「分かりました…。」

湊は少し俯き気味に了承すると、乙葉はボールを3つ手渡した。乙葉と同じように左手に2つ、右手に1つ持った。そのまま、右手で高くボールを上げる。その後、左手で低めにボールを1つ上げた。左手で投げたボールは右手でキャッチし、回転をして高く上げたボールを取ろうとする。しかし回転が早すぎたのか、回転し終わったにもかかわらず、ボールは落ちてこなかった。数秒後、ボールは湊の目の前を虚しくを落ちていった。湊は乙葉の表情を伺った。乙葉に何かきついことを言われてしまうのではないかと不安だった。しかし、乙葉の反応は湊の予想を大きく外れた。

「湊君って運動部だった?動きが大胆で早かったよ。多分その動きはサーカスに活かせるよ。」

「え、こんなダメダメなパフォーマンスなのにですか?」

「ダメダメなんかじゃないよ。むしろセンスあるよ、湊君。」

乙葉からの言葉はお世辞でもなく、本音であった。だからこそ湊の心に強く刺さった。

「今日はこれで終わろっか。」

「もうですか?ほとんど何もしてないのに。」

「今日はね。湊君の実力も分かったし。」

湊はそのまま乙葉とともに玄関まで行き、そこで別れた。

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