04
バーリスク組公認の御旗を得た俺たちは、
厄介なプチストーカーどもに悩まされることも無くなり……
えーと、そうは問屋が卸し金、でしたよ。
「何だか、以前よりも冒険者が群がってくるのですが」
「若い子たちからすっごく懐かれちゃってるのですがっ」
そういえばこのバッジ、ダンジョンサポーターの名称どおり、
冒険者たちのダンジョン攻略を手助けするっていう役割りもあるわけで。
ってか、サポーター本来の仕事はまさにそれ。
つまりは、お困りなビギナー冒険者たちが、
このバッジ目指してお助け要請してくるってことですよ。
そんでもって、人助け大好きっ娘な凄腕冒険者リルシェさんの、
懇切丁寧なご指導やら、頼りになり過ぎな救難活動やらが評判となって、
いつしかご覧のとおりの人だかり……
「先日は危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
「あの……よろしければ、この後お茶でも……」
「ちょっとあんたっ、お姉様に近付きすぎ!」
「ちゃんとルール守ってよっ」
「リルシェたん、はぁはぁ……」
あー、めっちゃ大人気ですね、リルシェさん。
あたかも、難破船の群れが目指す大灯台のごとし、ですな。
ちなみに、俺の方はめっちゃ不人気扱いです。
そう、まさにリルシェお姉さまにひっついているおじゃま虫扱い……
「ダンジョンに潜るどころじゃないですよぅ、これっ」
「何とかしてください! ウェイトさんっ」
えーと、何とかしてと言われましても……
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はい、何とかなりました。
惨状を見るに見かねたルスイさんの提案で、お引っ越しすることに。
いえ、テント村内での居場所を変えただけなのですが。
俺たちがキャンプしていた場所は男女間のトラブル防止のために区分けされた、
女性冒険者専用区画、の端っこだったのですが、
それゆえにリルシェお姉さまを慕うアレな娘さんたちの溜まり場、
と成りつつあったわけで。
で、お引っ越し。
場所は、いわゆるガチ攻略勢が集う区域。
この辺りに居るのは、酸いも甘いも噛み分けたベテランさんばかりですので、
アレなトラブルとは無縁のマジシリアスな空気感。
俺たちも落ち着いてダンジョン攻略に集中出来るってなもんですよ。
ってか、最初からこっちにすれば良かったですね、ルスイさん。
「リルシェさんから、ダンジョンビギナーなウェイトさんの訓練も兼ねての攻略、と聞いておりましたので」
「最初から上級者向け野営地のシビアな空気感はハードルが高かったかと」
……お心遣い、感謝です。
はて?
ルスイさんはいつもの場所に戻らなくてもよろしいのですか。
「組の方から、こちらのパーティーのお世話に専念するよう任じられました」
「以後、よろしくお願いします」
こちらこそよろしくお願いします。
凄く頼もしいのですが、もしかしてその配置転換って、
リルシェさん絡みだったりします?
「各ギルドやニルシェ王都から、組の方にいろいろあったようです」
「くれぐれも失礼のないように、と」
あー、申し訳ない。
どうやら外野が騒がしいようですが、
今まで通りのルスイさんでいてくれると嬉しいです。
「ウェイトさんたちがずっと普通に接してくれていること、俺、感謝してます」
「こんななりですので昔から面倒ごとに巻き込まれやすくて、まともな人付き合いとは無縁でしたので」
「これからも、変わらぬ良きお付き合い、よろしくお願いします」
こちらこそよろしくです。
でも大変だったでしょ、ルスイさんみたいなタイプだと。
俺なんかじゃ想像も付かないような凄いトラブルに、
沢山巻き込まれてきたんだろうなって。
「自分不器用なので、そういう時は全力で相手するくらいしか出来ませんから」
「ただ、やってる最中は身体を動かすので精一杯ですが、終わった後のあれこれとか苦手でして」
「最近は本とかの知識ばかりでそういうのに憧れる若い子が組に入りたがったりしますが、実際の現場を知れば……」
……何だか生々しいです、
経験者しか語れない実体験、ですね。
でも、ルスイさんみたいな漢気溢れるイケメンさんなら、
当然、乙女関係のトラブルには頻繁に巻き込まれるでしょうし、
そっち方面の経験が豊富なのも当たり前なんでしょうね……
「いえ、コワモテ絡みの荒事トラブルばかりでしたが……」
……
「……」