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こうして旅立った俺たちふたり、
目指すは因縁の地、ニルシェ王都。
あの頃とはひと味もふた周りも違うこの俺と、
元気丸出ししっぽぶんぶん丸なリルシェさん。
俺たちの新しい旅路に、乞うご期待!
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って、ちょっと待った。
お気付きでしょうか、皆さま。
この逃げ癖野郎の二枚舌。
ちょいと前まで、ねちねちぐちぐちこぼしていた、アレ。
お偉い方々の無茶振りなんて絶対に許せねえ、
俺は何があってもそんな厄介ごとからは全力で逃げ出すぜ!
っていう、例のアレ宣言。
そもそも今回のニルシェ王都行きは、俺としては矛盾どころじゃない所業。
だってほら、これって、
この異世界の全てのダンジョンを管理しているという、
いわば神様的役割りを果たしているミルルシュモさんからのお願い。
つまりコレは、とっても偉い方からの、上意下達ちっく任務。
おまけにもうひとつ、
その件をニルシェ王都のお偉いさんのところまで、わざわざ直接伝えに行く。
つまりソレは、とってもお偉い方への、自発的謁見行為。
うわっ、アウトじゃん。
アウトふたつでダブルプレイじゃん、これ。
二枚舌を舌切り雀されちゃうくらいにアタマ花咲か爺さんじゃん、俺。
はい、その通り。
俺の性根なんてそんなもんですから。
あんなクッソキッツいダンジョンでの強制冒険生活で揉まれまくったって、
おいそれとは変われませんから。
つまり、性根も性癖も、そんなコロコロ変わるようなもんじゃないってこと。
男だったら、困っている女性を助けるためなら全力出しちゃうのは当たり前。
えーと、相手が野郎ならケースバイケースも可。
めっちゃ癒し系な安らぎお姉さまミルルシュモさんに、
あんな風に上目遣いなおねだりされたら、
男だったら断れるわけないっての。
そう、コレこそがまさに、男らしさの発露。
お偉いさんとの謁見が超苦手、
そんな困難に勇猛果敢に立ち向かってこそ、
人生華咲くこともあろうってなもんですから。
そう、ソレこそがまさに、アタマ花咲か爺さんの心意気。
チャンスを逃さず、やるときゃヤるのが男ってもんですから!
「……」
……どうしました、リルシェさん。
お顔、恐いですよ。
「私としたことが、今の今まですっかり忘れていました」
「あのダンジョン修行の真の目的を」
はい?
「元々は、ウェイトさんが今まさにやっちゃってるソレ」
「その"アランさん目線"のアレなまなざしを急ぎ何とかせねばという重大ミッションだったのです」
「コレイカダンジョン攻略のあまりの激務に、私としたことがすっかり忘れておりました……」
……おっと、そういえば、
ダンジョンに潜っている間は、激しい鍛錬は極力控えるって感じでしたね。
俺もダンジョン攻略のあまりのキツさに、
毎日の自主鍛錬ルーチン以外はすっかりご無沙汰でしたよ、激しい鍛錬関連。
「それはそれでよろしいのです」
「何故なら、ダンジョン攻略で重要視すべき事柄において、残念ながら鍛錬は"やることリスト"の圏外」
「リスト上位の"命を大事に"とか"攻略に集中"とかと比べたら、"全力での鍛錬"はランキング下位」
「いや、過度な鍛錬による体力消耗は攻略の妨げともなり得ますので、むしろ積極的に止めるべき逸脱案件」
なるほど、確かに。
「しかしっ、ダンジョンとさようならした今の私たちには?」
「この厄介な"ウェイトさんとアランさんのキャラ被り"問題を解決するには?」
「先ほどウェイトさんが魅せてくれた見事なまでのアレなまなざしは、この熱い想いを呼び起こすきっかけに相応しいものでしたよっ」
「そう、今まさに必要とされているのは、これまで以上に激しいがっつり鍛錬ライフ!」
……うん、頑張れ、俺。
あとがき
ようやくリヴァイスっぽいノリになってきた、かも。
かなり迷いが吹っ切れたプチはっちゃけ状態のウェイトさん。
これが、半覚醒状態、
いや、はんかくせえ状態。
つまりは、これからもこんな感じでよろしくお願いします。




