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そして、第七層へ。
コレイカダンジョン地下31階は、
当時絶好調だったルスイさんですら手も足も出なかった真の魔境。
ここまで到達出来た冒険者パーティーは、ほんのひと握り。
その上、探索を続けられるのは選ばれし精鋭たちのさらに上澄み。
俺たちパーティーは……
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駄目っすね。
今日の攻略の進捗も、牛歩もいいとこ。
かろうじて全滅を免れた俺たちは、いつもの場所へと撤退。
つまりは、いつもの第六層広間にて野営中。
コレイカ第七層攻略、もちろん軽く考えていたわけではありませんが、
マジで想像以上の難攻不落っぷりなのです。
挑戦開始から結構な日数を費やしておりますが、
本日の進捗も微々たるものでしたよ。
実はそれって、俺たちパーティーの冒険ポリシーが一因でもあるのですが。
最優先すべきは"命を大事に"
なので、深入りも深追いも絶対に厳禁。
つまりは現在、攻略停滞中……
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「やっぱり、噂以上にキッツいですね」
「難易度設定おかしくないですか、このコレイカダンジョン第七層」
連日の撤退戦に、リルシェさんご立腹。
でも、心なしか嬉しそうでもあり。
「俺は、何だか嬉しくて」
「あの頃は手も足も出なかった第七層を、少しずつですが確実に攻略出来ていること」
「これこそまさに、パーティープレイの醍醐味なのです」
本日のルスイさんも、ご満悦。
本当に少しずつではありますが、
堅実な攻略で一歩一歩前進していることが嬉しいのでしょうね。
俺は……
あかん、限界ですわ。
おふたりは、この3人パーティーでの攻略にこだわってますが、
もし俺抜きだったらもっと順調に進めたはずなのは、
誰しもが火を見るよりも明らか。
つまりは俺こそが、炎上案件の火元にして火種そのもの。
何とかせねば……
「……またウェイトさんの逃げ癖の虫が騒ぎ出しましたよ」
「どうしましょう、ルスイさん」
「大丈夫です、リルシェさん」
「俺たちと共にある限り、ウェイトさんの進むべき道はひとつ」
「この状況から逃げるも進むも、己を鍛え上げるしか道は無いのです」
「まさにその通りなのですが、ひとつだけ心配なことが」
「なんでしょうか」
「コレイカダンジョン攻略にこれまで費やしてきた時間、すでにかなりのものですよね」
「確かに私たちパーティーのダンジョン攻略の進捗は、ウェイトさんの成長と共に着実に進んでおります」
「ですが、いかに成果を挙げているとはいえ、あのツァイシャ女王様がおとなしく待っていてくれるとは思えないのです……」
「なるほど、おっしゃる通りです」
「確かにそれこそが、俺たちの冒険の唯一の懸念材料」
「でもそういうことにならぬよう、先日訪れてくれたモノカさんに言伝という形でお願いしたのも事実」
「今はあちらの事情に惑わされることなく、ダンジョン攻略に集中すべきでしょう」
「それに、俺たちのウェイトさんなら、必ずや最後までやりきってくれますとも」
「……なるほど、これなのですね」
「今のウェイトさんとルスイさんの熱い関係こそが、あのツァイシャ女王様も心奪われた、ちまたで噂の"カップリング"……」
やめてぇ……
「いいわねぇ、そういうの」
「やっぱり長生きはするものよねぇ……」
……どなた?