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ポノカさんことモノカさんは、
俺たちとの歓談タイムの後、すぐにお帰りになられましたよ、
悠々と、徒歩で。
えーと、ここってコレイカダンジョン第六層の終端なのですが。
リヴァイス最強乙女モノカさんにとっては、
高難度ダンジョン深層ですらお散歩感覚で来られる場所なんですね。
「相変わらずのモノカっぷり、でしたね」
「もっと乙女として自重してほしいのですが……」
いえいえ、間違い無くリルシェさんも"同じ穴のムジナ"ですよ。
それにしても、本当にお噂どおりの方でしたね。
可愛らしさ満開の可憐な乙女っぷりとか、
圧倒的としか言いようの無いツワモノ感とか。
「……」
……どうしました、ルスイさん。
そういえば、モノカさんとはほとんどお話ししてませんでしたね。
「……俺、今まで何やってたんでしょう」
「上には上が居る、そんなことは承知の上で自分を鍛えて乗り越えれば良い」
「それが信条の冒険者稼業だったのです」
「でも、頂上すら見えない途方もない峻岳もあると知ってしまった俺には、自身のこの先の在り方が全く見えないのです……」
ルスイさん、心が折れちゃったのかな……
「……私も、今のルスイさんみたいに悩みました」
「チームモノカも、仲間のみんなも、それぞれの分野で超一流の傑物ばかりなんです」
「活躍の方向性が違うって自分を納得させようとしても、みんなの輝きを見ていたら、私だけ置いていかれてるような気持ちに捉われちゃって」
「でも今は、こんな私でも良いよねって思えてます」
「ここでこうして冒険出来ている私は、世界中でここにしかいない私だから」
「だから、"こうなりたいっていう未来を目指しているわけでは無く、今こうしたいからっていう現実のためだけに右往左往しながらも頑張ってる"」
「それを教えてくれた人のためにも、"現実逃避せずに未来からの逃避"しながら、脇目も振らずに今をまっしぐら、なのです」
「えーと、今の私の在り方がルスイさんの参考になるかはどうかは、今後の私の活躍にご期待ください、としか……」
「……ありがとうございます、リルシェさん、ウェイトさん」
「これこそがパーティーでの冒険、なのですね」
「俺ってやっぱり、ソロだった頃のあれこれに捉われ過ぎてたみたいです」
「こんな俺ですが、パーティーの力になれるよう、これからも一緒に頑張らせてください」
「……どうしました、ウェイトさん?」
……恥ずかし過ぎて身悶えすることも出来ず固まっている、俺。
リルシェさん、この場面で俺のアレなセリフを引用しちゃうのは禁じ手ですっ。
ってか、アレって独り言ですら無い独白だったのに、
何でリルシェさんが知ってるんですか!
穴があったら入りたい、
って、ここで穴なんて掘ったら即、第七層だっての。
俺、マジで逃げ場無し……