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撤収した一軒家テントを再設営。
場所はもちろん、第七層への下り階段のある第六層広間。
焚き火も起こして、みんなで一服中。
「ふごふふふぐふご」
「飲み込んでから喋ってください、モノカってば」
「合流早々、みんなの前で食いしんぼ乙女しないでくださいよぅ」
もぐもぐ、ごくり
「だって、ルスイさんのお菓子、超美味しいし……」
「じゃなくて、まずは通信途絶期間の状況と現状の説明、お願い」
かくかくしかじか
「なるほど、コレイカダンジョン攻略の方はとっても順調、と」
「では、まずはノルシェに通信遮断を決断させちゃった件、謝ります」
「ウェイトさんたちが信頼してエルサニアに託したナクレイスさんがあんなことに巻き込まれたから、ですよね」
「皆さん、本当にごめんなさい……」
いえいえ、どっちかって言うと、
エルサニア王国での日常茶飯事なノリについて行けなかった俺のせいですから。
こちらこそ、リルシェさんまで巻き込んでしまってすみませんでした。
「いいえ、それを言うなら巻き込まれたのはウェイトさんの方ですし」
「それに、きっと今回もノルシェが頑固乙女しちゃったんだろうなって」
そこは全く否定出来ませんが、今後のパーティー活動の安寧のためにも、
その話題はこれにてお開きってことで。
「うん、アリシエラさんやナクレイスさんから聞いていたとおり」
「ウェイトさんって、本当に礼儀正しい紳士なんですね」
「これならノルシェも安心、かな」
えーと、どうやらエルサニアには全てが伝わっていないようですが、
俺って皆さんの想像以上にいろいろやらかしてるんで、
リルシェさんは全然安心出来ていないと思いますよ。
「そういうところ、ですよ」
「そういえばノルシェって、わんこみみモードの時はリルシェなんだっけ」
「ちなみに私も、この変装してる時は"ポノカ"って名乗ってます」
「ポ……私たちだけの時はモノカと呼びますよ」
「モノカって、私たちのダンジョン攻略に合流するためにここまで来たのですか」
「まあ、戦力的には願ったり叶ったりですけど……」
「大丈夫だよ、おじゃま虫したりしないって」
「今回追っかけて来たのは、こっちのみんなの近況が知りたかったのと、ウェイトさんへのツァイシャ女王様からの言伝を伝えに、です」
ツァイシャ女王様、ですか……
「はい、そうです」
「女王様的には書簡とかだといろいろと良くないらしくて、お願いされた私が直接伝えに来ました」
「それでは……」
『今回の件、全て私の不徳の致す所です』
『ウェイトさん、皆さん、本当にごめんなさい』
『今回のやらかしで私のことが嫌いになっても、エルサニアという国を嫌いにならないでほしいです』
『遊びに来てくれたら、精一杯おもてなしします』
『もし来てくれなかったら、お忍び旅行で会いに行く予定です』
『それでは皆さん、良い旅を』
「以上、ツァイシャ女王様からの言伝を、そっくりそのままお伝えしました」
まるで反省していない……
えーと、こういうこと言うのはアレなんですけど、
本当にツァイシャ女王様ご本人からですか?
代筆担当の歳若い祐筆とか、実はご本人じゃなくて娘さんから、とか……
「いいえ、間違い無くツァイシャ女王様から直接、ですよ」
「ナクレイスさんの件でライクァさんからすっごいお説教されて、ご本人はすっごくヘコんでいましたけど」
……はい、言伝の方、確かに。
モノカさんもお疲れ様でした。
それで、返信と言ってはなんですけど、
俺からも女王様宛の言伝、お願いできますか。
「何なりと、どうぞ」
お忍びで来るのだけは絶対にやめてください。
以上です。
「はい、確かに承りました」