表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
墓守るハカモリ  作者: 苦慮緑了
れべる1:お手紙配達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/32

趣味じゃない

 そんな訳で俺はバニーに着替えていた。


 何を言っているか分からないし分かりたくも無い、俺はただクソッタレ馬鹿変態ノータリン精霊を信頼してしまっただけだ。


 (うっひいいい!すごい、凄いわ、リロ、あなたは最高よ!精霊界一オシャレな私が言うのだから間違いないわ、あなたは誰にも劣らない最高の身体をしているわ!)

 「黙れ、クソ精霊」

 (いいえ黙らない!黙らないわ、何故ならあなたは美しいから!可愛くもある!その格好で私に愛嬌を振り撒いて!冷たく罵っても良いわ!真面目な表情をして!気の抜けた表情でも良いわ!)

 「黙れ黙れ黙れ、頭がおかしくなりそうだ、死ね、いっぺん死ね」

 (ああああああああ!最高!最高!最高よ!)


 いつもならすぐに繋がりを絶って消す不快な甲高い声も、今は消せない。


 精霊は普段精霊界にいる、だからこっちから繋がりを作ったり絶ったり出来る、だが今は違う。


 精霊界からこの世界へと召喚したのだ、精霊の現出……非常に多くの魔力を必要とするその技術は当然利点も多い。


 だがいかんせん魔力が少なすぎる、現出するだけでも一時間、解決策は一つだけ……。


 それがバニーを着ている理由だ、このバニー衣装は精霊が魔力を元に作成した物。


 現出時間は二倍、更に術式に必要な魔力量も大幅に削減される……らしい。


 ちなみに全身1セットだ、耳と尻尾も着けないと効果が無い、クソが。


 (ほーらね?この衣装作っておいてよかったでしょう?)

 「テメーが魔力を使わなけりゃ魔力量の心配なんてしなくて済んだんだよ頭を働かせろよクズが」

 (ああ!良い……あなたの感情がダイレクトに伝わってくる……すごく良い、すごく良いわ……!)


 俺は何でこんな格好して変態と喋くってんだクソが。


 精霊の現出には依代があったほうがいい、今回は魔力量に制限があるから依代を使わないという選択は無かった。


 そして依代とは俺のことである、今の俺は精霊と一体となっているのだ。


 「同調率を上げる、思考を鎮めろ」

 (え?あ、そんなの無理、もう無理ダメダメ待ってあっあっあ)


 頭の中身を溶かして混ぜて一個にする、俺の思考と精霊の思考が蕩けて絡み合う。


 事前に精神を分割しておくことで俺の頭は無事だが、精霊はダメだったようだ。


 (無理、何これ、あ、だめぇ、おかしくなるぅ!)

 (その気色の悪い思考を止めろ)

 (無理いい!)


 頭がガンガンと痛む、鼻血が止まらない、だが止める気は無い、精霊との同調は必須だ。


 思考の次は感覚だ、全てが見える、全てを感じる、これが精霊の感覚か、馬鹿には勿体無いオモチャだ。


 (馬鹿じゃ無い!)


 仕組みとしては情報の転移だろう、石の裏すら視認できる、気持ちが悪い、ゲロを吐きそうだ。


 (次だ、術式のテストをするぞ)

 (吐きそう、無理)


 精霊の現出の最大のメリットは普段の精霊界を通して術を唱えてもらう工程を丸ごと消せること。


 更に思考の一体化により精霊ではなく俺が術の構築を行える。


 まずは転移だ、座標を指定して術を発動。


 精霊界なんて通らずに直接身体を飛ばす、景色が一変する、足元を流れていた川は消え去り森の中に。


 「っ!?リロ・ハーネス!?なんですかその珍妙な格好は!?」

 「あ?おーおーおーちょうどいいとこに」


 異教徒か?殺せ殺せ。


 手を敵の頭に向ける、敵が姿勢を低くしながら剣を振るおうとした。


 転移だ、敵の生首を手元に引き寄せる、頭を失った体は崩れ落ちた。


 「ひひっ!あっはは!おっもしろいなぁ、コレ」


 生首を適当に投げ捨てる、まずいな、相当歪んでる、人間としての精神を保ててない、倫理観や思考が精霊よりになってる。


 もうちょい人らしく振る舞え。


 「関係ないね、好きにやらせろ」


 ……まあハカモリを助ける事が出来れば良いか、それ以外は些事だな、幸い分割した精神は無事だ、後で戻そう。


 「次だ、へへ、次は内臓を丸ごと取り出して……おえっ」


 胃の内容物がせりあがってくる。


 (きもちわるい……たすけて……)

 「吐き気を抑えろ!俺まで……うげええぇ」


 ついでに気を張って止めていた鼻血が噴出する、頭の使っちゃいけない部分まで使ったせいだ、精霊の術は人の頭で使わないほうがいいらしい。


 (何これ……?私がリロで私は精霊で、私は私でだけど私じゃなくて……?気持ち悪い、何これ……?)

 (そういうもんだ、慣れろ、それより今後術はお前に任せる、良い感じに頼む)

 (お、鬼!悪魔!神!)


 何と言われようがどうでも良い、早く感覚に慣れなくては、今の状態では戦えない。


 「もう無理じゃね?諦めようぜ?」

 (さ、賛成!もう無理よ!絶対無理!私はもっと楽がしたい!)


 何で俺まで諦めてんだよ馬鹿が、精霊に引っ張られてんのかな……。


 だが問題は無い、俺(身体)は今精霊と一体化している、そして契約者には精霊に対する命令権があるのだ。


 その命令権は現状最もリロ・ハーネスらしい精神を持った俺(精神)に与えられている。


 クズ共が……!命令を聞け……!


 「精霊……!死ね……!お前のせいで……!」

 (どう考えても私じゃなくてあなたでしょう!?)


***


 ハカモリは酷く焦っていた。


 その原因は勿論異教徒のせいである、ハカモリの悩みはほぼ全て異教徒が原因だ。


 異教徒の頭を潰しながら溜め息を吐く、リロを投げ飛ばしてから三十を超える数の異教徒を殺してきた。


 だが駄目だ、ハカモリには確信があった、この程度の異教徒が何人居ようと自分は死なない、だがハカモリは未だ命の危機を感じ続けている。


 こんな雑魚じゃない本命のことを考えると頭が痛い。


 ……リロやハイネライドの安否も心配だ、リロが言うにはハイネライドが危ないらしい……リロは何やかんや大丈夫そうだ。


 「どうしよう……?諦めて帰って欲しいのに……」

 「リロさんの事ですね?分かります分かります、心配ですよね?」

 「「超輝の流星」」


 ハカモリの手から発射された輝く弾がいつの間にか背後に立っていた異教徒を吹き飛ばす。


 「痛いですね、いきなり何をするんですか?」


 土煙の中から異教徒がゆっくりとこちらに歩いてくる。


 ……一応威力を高めた「超輝の流星」だ、普通の異教徒なら死んでいたはず。


 「ハカモリさん、もう一度だけ忠告します、この山から引いてください、最終通告です」

 「断る」

 「……まあ、貴女はそう言うでしょうね、では殺します」


 異教徒が指を鳴らす、それを合図に周辺から異教徒の気配がするようになった。


 「近年我々は数だけではなく質を高めるようにしていました、圧倒的な個には数だけでは無意味だったので」

 「その成功例の一つが私たちです、長い研究の末、我々「食の使い」は魔導器官を有する人の生成に成功しました」

 「この場にいる全員が、何らかの魔導器官を持っています、一時は山を離れていましたが、先程戻ってきたのですよ」

 「……本当に、勝てるとお思いですか?最後ですよ」


 答えは決まっている。


 「……勝てる、勝てないじゃない、私は諦めない」


 周辺の異教徒も含めて全ての異教徒が溜め息を吐く。


 全員が何かしらの魔眼等を持っているのだろう、苦労しそうだ。


 死ぬ前に殺せば解決……!見せてやる……!師匠に鍛えられた神術の数々を……!


 全身が硬直した、能力の考察は後、対応が先。


 強化した身体能力で無理やり身体を動かす、まずは目の前の異教徒から……!


 それより先に異教徒が背後に現れる。


 振り向くより先に腕が歪む、「肉体の堅牢」が即座に消え去り腕がグチャグチャの肉塊に変形する。


 背後の異教徒が手をハカモリの背に当てる、手のひらから熱が発生した、肉の焦げる匂いがする。


 「万象の治癒」と「肉体の堅牢」を発動しながら腕を振るう。


 腕が当たる直前に全身が再び硬直する、背後にいた異教徒と目が合った。


 腕を無理やり動かそうとした瞬間「身体の活性」が解除された、同時に別の異教徒がハカモリの首に牙を突き立て「肉体の堅牢」が消えた。


 「身体の活性」を掛け直す、同時に目が歪む。


 眼球が潰れる、全身を力任せに振り回し、体の硬直を解除した。


 視界のないまま「身体の活性」を重ねて掛ける。


 更に増した身体能力で真上に跳ぶ、まずは一旦時間を稼ぐ……!


 自身に掛かる重力が増した、加えてさっきまで空が見えていたのに木々にぶつかった。


 「肉体の堅牢」を二重で掛ける、周囲は視認できないが落下していることは分かる。


 何をされているのか全く分からないが、何か攻撃されているようだ、それを無視して「欠損の消滅」と「万象の治癒」を使用して目と背中の火傷を治す。


 地面に着地した、まだ「身体の活性」は続いている、再び飛びあがろうとしたハカモリを動く鎖が縛り上げた。


 力任せに引きちぎると、再び「身体の活性」が解除された。


 術の解除……解呪の魔眼だろう、うざったい。


 「光弾」と「超輝の流星」を大量に発動する。


 視界を消す、見えなければ魔眼も無意味だ。


 周辺一体を全て消し炭にするまで出し続けてやる……!


 突如周囲に湿気が出た、魔術の兆候だ。


 ハカモリの周囲が水で埋め尽くされた、「健康」を発動させ呼吸の必要性を無くす。


 続けて「水操」で周囲の水を操ろうとして、気づく、水温が明らかに下がっていることに。


 魔術の兆候、さっきは水、今度は……氷だ。


 まずいと思った瞬間、景色が消える、気付けばハカモリは誰かに抱き抱えられていた。


 「よおハカモリ、ヒヒッ、大丈夫かよ?」

 「り、リロ……?」


 ハカモリはいつのまにか上空にいた、これどうやって浮いているんだろう?


 見下ろせば下には大きな氷塊があった、あれの中にいたら危なかっただろう、多分リロが転移で助けてくれたのだ。


 「さっきはああ言ったが前言撤回だ、ハカモリ、ヒヒヒッ、アイツらを全員殺す、準備は完璧だぜ」

 「……」


 何だかリロの様子が変だし、笑い方が気味が悪かったりしたが、それより何より気になった事があった。


 リロの格好である、胸は半分露出してるし、背中も出てるし、脚はなんか網だし、頭にウサギの耳がある。


 「おいおいおいハカモリ?どうした馬鹿面晒して、頭打ったか?」

 「……その、リロ、その格好は何?趣味?」


 リロは突然真顔になって驚くほど平坦な声を出した。


 「違う、断じて違う」

 「でも、その、耳と尻尾は?何の意味があって付けてるの?」


 リロはしばらく黙って苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、突然表情を変え、ニヤニヤと笑みを浮かべた。


 「面倒臭え、何でも良いだろ、ヒヒッ、趣味だ趣味、こういうの好きなんだよ」

 「……意外」

 「それよかハカモリ、行くぞ、異教徒狩りだ、全員殺せ!」


 何だか納得いかない気がするが、深くは考えない事にして、ハカモリは異教徒に意識を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ