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89話 ジョニーと新たな敵と

 歩いていると、突如としてシェイプシフターが足を止めて警告をする。


「!」

「どうした? 敵か?」


 頷くシェイプシフター。そして全員が足を止めて先を見る。

 先を見れば、そこに居たのは今まで見て居たバーサーカーではなく……


「えーっと、あれは浮いている火の玉ですか……?」

「だな。そういうモンスターもいるはずだ」


 俺の記憶が正しければ……恐らく、ウィスプか? 幾つもの火の玉が浮かんで飛び回っている。

 火の玉の肉体を持つモンスターだ。体が火そのもので出来ている事から物理的な攻撃には強い。だが、魔力によって肉体を保っているので魔法には弱く、さらに中心に存在する核を破壊出来るなら物理的な攻撃でも倒す事が出来る。モンスターとしてはかなり弱い存在だ。このダンジョンに出てくるにはやけに弱い――


「……いえ、ウィスプだけではありませんわ」

「なんだって?」


 浮いているウィスプ達が、何かに気付いて逃げようと飛ぼうとしている。だが、逃がさないようにとそこに現れたモンスター。

 ――それ赤い体表をした巨大な蜥蜴だ。思わず、名前を呟く。


「サラマンダー……!?」


 サラマンダーは、逃げようとするウィスプ達を一匹ずつ口を開けて食らっていく。逃げられずウィスプは残らず食らいつくされ、サラマンダーは満足そうにしながら腰を据える。

 ……なるほど。何故そんな弱いウィスプというモンスターがいるのかと思ったが……餌という訳か。


「ウィスプは確か、魔力の濃い場所で火の気が多いと自然発生するんだったよな。もしかして、バーサーカー達は焚き火をしていたのか?」

「私もその線が濃いと思いますわ。飼っているのか、もしくはサラマンダーと共生関係になっているのかのどちらかですわね」

「そんなに凄いんですか? あの蜥蜴って」


 バンシーからの質問に頷く。

 凄いというか、なんというか……冒険者でも知っている人間が多い程に危険なモンスターなのだ


「間違いなくヤバいモンスターだよ。基本的にボスとして見る事が多いらしいんだが……純粋に強力なモンスターで、火を扱う魔法なんかも使える。さらに、興奮するほどに体温が上がっていくんだが……」

「確か……記録によると、数分もすると大地が溶け出してきたんでしたわね。その方達は逃げ出したそうですけど、治癒が遅れれば死ぬような火傷を負ったそうですわ」

「溶けっ!?」


 バンシーが絶句する……サラマンダーという生物は、その強さよりも性質が危険だ。

 生物にとって一定以上の熱というのはそれだけで危険だ。そして、サラマンダーの場合は近寄る事すら困難になるほど体温を上げる。


「そ、そんなのどうやって倒すんですか?」

「まあ、温度が上がりきる前に倒す。近寄られないように戦う。まず、熱に影響されない方法をとる。冷やす……辺りか?」

「そうですわね……ただ、その中に取れる手段はありますの?」


 ふむ……そうだな。

 良いメンバーが居るかも知れないと思って呼び出してみる。


「じゃあ、グレムリン。ちょっと戻っていてくれ。ザントマン」

「おっと、久々だね。どうしたんだい?」


 呼び出されたザントマンは、そんな風に聞いてくる。

 最近はあまり活躍させられていなかった。なので、今回は活躍して貰うとしよう。


「あれに砂は効くと思うか?」

「えーっと……アレ?」


 そう言って眠そうにしているサラマンダーを見たザントマンは悩んでいる。


「……ううん。どうだろうなぁ。多分眠るから目に入りさえすれば効くと思うよ。ただ、あのレベルのモンスターって纏ってる魔力の量が桁違いだから僕の砂が弾かれる可能性はあるね」

「よし、なら試す価値はあるってことか」


 避けて通るという選択肢もあるが、不意打ちされれば性質も相まって対処できないタイプのモンスターだ。

 ここで倒しておく方が安全だと判断をする。


「よし、それじゃあ……ちょっとリスクはあるがやってみるぞ」


 そして、サラマンダーとの対決が始まり――



「……思ったよりもあっさりだったな」

「バーサーカーの方が苦戦しましたわね……」

「まあ、油断している敵って大体こういうもんだよ」


 俺達の目の前にはスヤスヤと眠っているサラマンダー。

 ……まあ、簡単な事にはありがたいのだが……気合いを入れた分、気が抜けたというのが正しい。


(サラマンダーも食事後だったからか、目の前の外敵に対しても反応が遅れて油断していたけども……)


 こちらを視認し、体を動かそうとしたサラマンダーに対してラトゥを模倣したシェイプシフターによってこっそり近寄ったザントマンは砂を精製してぶつけた。すると、弾かれる事もなくそのまま眠ってしまったのだ。

 無警戒なのもそうだが……


「やっぱり変だな……ダンジョンのモンスターって感じがしない」

「同感ですわ。ダンジョンのモンスターと言うよりも……地上に生きている魔獣のようですわね」


 その言葉で腑に落ちる。

 ダンジョンのモンスターというのは、基本的に防衛機構なのだ。だから、その中でモンスター特有の性質や生態が反映される事はあるが、それでも基本的にはダンジョンを守るために外敵に対して敵対的であり普段の行動もダンジョンを守るという目的のために繋がるはずだ。

 しかし、サラマンダーもバーサーカーもそうなのだが、どうにも行動がダンジョンを守るというよりも、ダンジョンの中で生きているという風にしか感じられない。


(コレがどういう意味があるのかって考えると……)


 ……考えて見るが首を捻ってしまう。しかし、思い浮かばない。


「それで、このサラマンダーはどうしますの?」

「あー、サクッとやっちゃってくれ。ラトゥに頼んでもいいか?」

「ええ、構いませんわ」


 そういって、サラマンダーに攻撃を始めるラトゥ。

 ……流石に眠っているとはいえ、名の知れたモンスターだけはある。ラトゥの攻撃を何発食らっても中々消滅しない。正面切って戦っていたら間違いなく甚大なリソースを必要としていただろう。


「んー」

「……どうした?」


 ザントマンは、サラマンダーを見てうなっていた。

 どうしたのか聞いてみると、


「んー、なんというかさ。僕が仲間になったときのダンジョンに居たモンスターにちょっと似てる様な気がしてね」

「あのワームが居たときのか……どこが似てるんだ?」

「無秩序な感じっていうのかな? 本来のダンジョンと違うというか……」


 ふむ、面白い意見だが……


「でも、あの時みたいに渡りが居たとしてもダンジョンの核が消滅してたらダンジョンが消えるんだろ? それに、寄生していたとしてもこのダンジョンは誰も踏み入ってないから痩せ細る一方じゃないか?」

「そうなんだよね。だから、僕の考えも的外れな可能性が高いんだけどね」


 そんな風に言うザントマンだが……確かに、ちょっと気になるな。


「お待たせしましたわ。こちらは魔石ですわね」


 と、そこで良い笑顔でサラマンダーを魔石に変えたラトゥが拾ってきた魔石を渡してくれる。


「ああ、ありがとうな。ほら、ザントマン」

「ん、ありがと」


 そう言って魔石を飲み込んだザントマンを見ながら、ラトゥは面白そうな顔をして眺めている。


「……ん? どうかした?」

「いえ……魔石を飲み込んで自分の中に蓄えるのを見て改めて思いましたの。見た目は本当に変わらないのに元はちゃんとモンスターなのだなって」

「まあ、見た目の違いなんて些細だろうからね。魔種だって、一歩間違えればモンスターに近い存在でしょ?」

「うっ……否定出来ませんわね……」


 痛い所を突かれたという表情を浮かべるラトゥ。

 ……そういえば、出会ったときに魔石を食ってまで魔力を求めていたからな……


「……まあ。先に進むか。ほら、行くぞ」

「そうですわね」

「りょうかーい」


 そして一抹の疑問などを残しながらもシェイプシフターの先導で進むのだった。

【解説 サラマンダー】

巨大な蜥蜴。

火を操る事が出来て、さらにその体表は丈夫であり下手なモンスターでは傷を付ける事すら難しい。

また、その体質として超高温に耐えれるだけではなく感情の高ぶりによって体温を上昇させる事が出来る。

その体温の上昇に対して確認している限度はなく、大地が溶け出し触れるだけで武器が溶け出す程である。

しかし、燃費が悪く常に食事を求めており、長時間の戦いになると魔力が枯渇して力尽きる。

とはいえ、長時間の戦いでサラマンダーを相手に無事に生き延びれる実力があれば、体温が上がりきる前に倒す方が早いのも事実である。

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