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22話 悪徳商法


 そろそろ寝るか、なんて考え始めた頃。


「邪魔するぞ、ロード」


 額に青筋を浮かべたおっさんがノックもなく扉をあけ放って室内へと入ってくると、その後ろからぞろぞろと続く見覚えのある顔たち。


 アリス、メルシー、リュミナスにリーエン、なぜかミーナまでいる。


「な、なんだ……?」


「話は聞いたぞ。お前、いくらなんでも男としてやっていいことと悪いことがあんだろ?! この際、やっちまったことを咎めるつもりはねぇ。だが、男として責任くらいは取らなきゃいけねぇだろうが!!」


「は、はぁ?! 一体何言ってやがんだ?!」


「とぼけんじゃねぇよ!! この嬢ちゃんたちはみんな、お前に大切なものを捧げたって言ってやがんぞ?! ならおめー、最後まできっちり面倒みんのが男ってもんだろうが!! 俺の知るロードっつー男は、俺がわざわざそんなこと言わなくても、ちゃんと理解(わか)ってると思ってたんだがなぁ?!」


 今にも殴ってきそうなほど怒りに満ちた瞳で俺を見据え、大声で叫ぶおっさん。


 おい、どんな説明を受ければ、そんな誤解をするんだよ……?!


「ロード、あんたがこんなに手の早い男だったなんてね……。実はあたしのことも狙ってたんでしょ?!」


 訳の分からないことを言いだしたリーエンは、僅かに潤む瞳でキッと俺を睨みつける。


「バカ言ってんじゃねぇよ! 俺はなんもしてな……くはないが、少なくともお前らが思ってるようなことはしてねー!!」


「男が四の五の言ってんじゃねぇ! なんかしたって自覚が少しでもあんなら、そういうことだろうがっ!!」


「ぐっ……」


 痛いところをついてきやがる。


 ああもう、なんだよ! どうせ俺が悪いんだろ?! ちくしょーが!!


「なんだかんだでよぉ、お前とは長い付き合いだ。あーだこーだ言いながら、筋の通らねぇことをしねぇのも知ってらぁ。この離れもすっかりお前の家みたいになっちまってるし、良い機会だ、お前に売ってやろうじゃねぇか。元手はかかるだろうが、改装すれば他の部屋も使えるようになんだろ。素材を集めてきてもらったりと、世話にもなってるしよ」


「おっさん……。そんなに俺のことを思ってくれてたんだな……。ありがとよ、恩に着るぜ。……だが、それとこれとは話が別だ!!」


 背後にある窓から逃げるべく、バッと振り返る。


 こんなの、良い商品がありますよーとか言って足を止めさせて、突然後ろから突き飛ばした挙句、商品が傷ついたから購入しろとか言い出す悪徳商法と一緒じゃねぇか!!


 冗談じゃない。俺はこんな理不尽な現実、断固として拒否するぞ!!


 と、思ったんだが――。


 俺の取る行動などお見通しだったらしく、おっさんが俺の首根っこを捕まえて引っ張り上げたせいで、どれだけ足を動かしても前に進まない。


 元冒険者で俺より体格が良い上に、毎日何百回と重い鍋を振るうおっさんの筋肉は伊達じゃないってか……!


「どこに行こうってんだ? あぁん?!」


「ちょ、ちょっとお手洗いに……」


「そんなにしてぇなら、ほれ。これを使っていいぞ」


 おっさんはそう言うと、宙に浮かされたままの俺に湯あみ用の桶を差し出す。


「い、いやぁ、大丈夫かなぁ。なんかいきなり尿意がひっこんじまった」


「次逃げようとしたら、今後お前がおいたできないように、去勢すっかんな?」


 声のトーンと良い目と良い、全てがマジだと物語っている。


 俺が必死にこくこくと何度も頷くと、ようやく解放してくれた。


 こうなったら、情に訴えかけるしかねぇな。


「き、聞いてくれよおっさん! 俺は本当に何もしてねぇんだよ!! あいつらとは確かにパーティーを組むことになったが、それだけだ! 誰一人として関係も持っちゃいねぇし、誘ったこともねぇ!!」


「ふむ……。嘘は言ってねぇように見えるが……。嬢ちゃんたち、こいつはこう言ってるが?」


 おっさんの心が僅かに俺に傾き、ちらりとアリスたちのほうを見やる。


 いける、いけるぞ! さすがおっさん、略してさすおじだ!


「オレはよ、嫌だって言ったんだ……。なのにロードは無理やりオレを抱き寄せて、離せって暴れても許してくれなくて……。そのまま無理やり、オレの首筋に顔をうずめて来て……うぅっ」


 わざとらしく目元を右手で覆い隠し、肩を震わせるリュミナス。


 お前そんなキャラじゃねぇだろうが! ふざけんなよ!!


「私もその現場にいたんですが、止めることができなくて……。その罪悪感もあり、せめて次は身代わりになろうと決めたんです……。ロードさんに、手を出すなら私にしてくださいって伝えたんですが、結局私に手を出したあと、またリュミナスさんを……」


 もう耐えられませんと言わんばかりに、リュミナスの背に顔をうずめて震えるアリス。


 意味合いは似てるんだが、ニュアンスが全然ちげぇだろ?!


「あたしはちょうどその時、ロードにお使いを頼まれて不在にしていたの。でも、戻ってみたらリュミナスが倒れていて……。話を聞いて、二人にとても申し訳なくなったわ。あたしだけ綺麗なままでいいのかしら、って……。そうして改めて話し合いの場を設けたのだけど、二人の言う通り、次々にロードの歯牙にかかって……。一人逃げ出すなんてできないし、ならもういっそあたしも二人と同じ立場になろうって……」


 そう言いながら、メルシーはリュミナスとアリスを抱き寄せた。


 色々とおかしいだろうが!!


「ロードさん、裏でそんなことをしてたんですね……。ボクに言ってくれたじゃないですか! その控えめな胸が良いって!! あれは嘘だったんですか?!」


 顔を手で覆い隠し、わぁーっと崩れ落ちるミーナ。


 お前までかよ?! だいたいそんなこと言ってな……いよな?!


「ま、まって――」


 さすがにここまで脚色されてはかなわないと、否定しようとしたんだが――。


「ロード。お前に残された道は、二つに一つだ。自分(テメェ)のやっちまったことに責任をもって、誠心誠意彼女たちに向き合い一生をかけて幸せにするか。これ以上の被害者が増えねぇよう、ここで去勢された上で有り金全部置いて、一生労働奴隷として働いて罪を償うか。選べ」


 骨が砕けそうなほどの力で俺の肩を握ったおっさんは、全身から殺気を迸らせながらそう告げた。


「べ、弁解を――」


「選べ」


 選択肢以外の言葉は喋らせてくれないようで、さらに肩を握る力が強くなる。


 あぁ、そうか――。


 俺が気づいていなかっただけで、すでに完全に詰んでいたんだな。


 もう何を言ったところで、俺の味方になってくれるやつはいないだろう。


 これ以上抵抗したところで、敵が増えるだけだ。


 ならいっそ、前向きに考えようじゃないか。


「私ロードは、自らの犯してしまった罪に真摯に向き合い、責任を果たしていく所存です」


 俺の言葉に、そうかと笑うおっさん。


 上等だよ、こうなりゃとことんヤッてやろうじゃねぇか。


 お前たちに男の怖さってやつを、しっかり教えてやるぜ。


 俺の決意など露知らず、要求が通って嬉しそうに笑うアリスたちを見て、俺もニィーーーッと笑うのだった―――。



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