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17話 バカの1つ覚え


 メルシーが連れて来た救援は、カイエンを筆頭に『最強の矛(ゲイボルグ)』の3人、そしてA級冒険者パーティーである『空の彼方』の6人、同じくA級冒険者パーティーの『空蝉』の6人。

 合計16人の大所帯だ。


 そこへ俺たちのパーティーを加えて、総勢20人での討伐戦。


 さすがにこの面子ならば、いかにハイドラグオーガが強かろうと圧倒できると踏んでいたんだが、どうにもうまくいかない。


 というのも、マザマージたちが予想以上にひどい有様だったからだ。


「おい、マザマージ! 前に出すぎだと言っているだろう!!」


「うるせぇんだよっ! こんな雑魚、俺たちだけで十分だ!!」


「あたいたちの活躍を、良く見とくんだねっ!」


 カイエンの静止も聞かずにハイドラグオーガの前へと躍り出たマザマージとシルストナは、駆け引きもなくいきなり大技を発動。


「全てを切裂け、『空地斬』!!」


「貫け、『竜牙拳』!」


 体勢を崩すなり、小技の中に混ぜ込むなりしないと当たらねぇって散々言ったのに、相変わらずだな。


 案の定、二人の技はかすりもしない。

 それどころか見事なカウンターを入れられ、血を流しながら後方へと転がって来る始末。


 結局見捨てることもできず、現状ヒーラーのいない最強の矛(ゲイボルグ)に変わりアリスや各パーティーのヒーラーが総出で治療するハメになり、回復してはバカの1つ覚えで突っ込んでの繰り返し。


「いい加減にしろっ!! 魔力回復ポーションは十分に準備してきたとはいえ、無限にある訳じゃないんだぞ?!」


「やかましいっ! こんなはずはねぇんだ!! なんで今まで通りにいかない……?! まさかロード、テメェなんかしてんじゃねぇだろうな?!」


「そうだ、きっとそうに違いない! 自分の実力がないのが理由なのに、クビになったことを逆恨みしているんだろ?!」


「いい加減にしてくれる? この場に貴方がいるだけでも目障りだというのに、邪魔までしないで」


 しまいには俺のせいにしてきやがった。


 俺が何を言ったところで信用しないだろうし、無視が得策だと思ったんだが……。


「何も言わねぇってことは、認めてるようなもんだろ?! ギルドマスター、即刻そいつを処分しろ!!」


「バカかテメェは?! 今はそんな場合じゃねぇだろ! おい、後ろ!!」


「あ……?」


 戦闘の真っただ中だというのによそ見をしていたマザマージは、見事にハイドラグオーガの薙ぎ払いをその身に受け、大きくフッ飛ばされて勢いよく壁に激突。


 またまたヒーラーが回復するハメになり、その情けない姿に『空の彼方』と『空蝉』の面々は驚きを隠せない。


 あいつらのせいで完全に場の空気がおかしいことになってるな……。


「はぁ、仕方ねぇ……。俺は少し前に出る」


 アリスたちにそう伝え、あいつらの補助をしに向かう。


 周りにいる連中などお構いなしに右に左に腕を振るうシルストナの攻撃が当たるよう、ハイドラグオーガを軌道上に誘導し。


 ヒリテスの魔法が当たるよう、シルストナの一撃で吹っ飛ぶハイドラグオーガの方向を調整し。


 勢いよく飛びかかるマザマージの一撃を邪魔されぬよう、ハイドラグオーガの動きを阻害。


 補助という名の介護をしつつ、次々に攻撃を当てさせていく。


 火力だけは高いやつらなので、さすがのハイドラグオーガといえど再生が追いつかないようだ。


 合間合間にリュミナスやカイエン、2つのパーティーのアタッカーたちも攻撃を加えてくれていたことで、ハイドラグオーガは見る見る間に全身傷だらけになっていき、肩で息をするまでに疲労。


「もう少しだ! 最後まで気を抜くんじゃねぇぞ?!」


 リュミナスの掛け声にオーーーッと応じた一同。


 だが、攻撃が当たるようになったことで良い気になったマザマージたちは、あろうことかリュミナスたちに邪魔をするなと言いだす。


「お前らがいると動きづれぇんだよ! あとは俺たちに任せて、黙ってみてろ!!」


「そういうことだから、邪魔してくれんなよ!」


「しっかりとその眼に私たちの動きを焼き付けて、よく勉強するのね?」


 意気揚々と突っ込む三人に、どうしたもんかと頭を抱えたくなった。


 というのも、今までは前線に人が多かったからこそ、マザマージたちに気づかれずに影から補助することができていたんだが、やつらしかいないとなると俺が何かしていることに気づかれちまう。


 かといって、放っておけばさっきまでの繰り返しになっちまうしなぁ。


「アリスが言っていた意味がよく理解できたぜ……。ありゃダメだ……。おいロード、オレたちも突っ込む。なんとか最後まで介護してやれ」


 ハァとため息をつきながら、多分に同情を込めた視線で俺の肩をぽんぽんと二度叩いたリュミナス。


「いくぞ、お前たち! 今まで通りにいけば勝てる!! あいつらは無視していいぞ!」


 そう言ってリュミナスが駆けだしたことで、立ち尽くしていた一同も後に続く。


 お陰で俺も再び介護に戻れ、結果として誰一人欠けることなく討伐に成功することができた。


「チッ、余計なことしやがって。そんなに手柄がほしかったのかよ? ま、あのロードを連れてS級ダンジョンに潜るくらいだからな、しょせん代理は代理ってことか」


 帰路についている最中、先頭を歩くリュミナスに聞こえるように、マザマージが悪態をつき始める。


「そう言ってやるなよ、マザマージ。ギルドマスター代理も、きちんと成果を上げないと困るんだろうさ。今日だってあたいたちがいなきゃ全滅してたんだ、あとでたんまりと報酬をくれるはずだよ」


「当然でしょう。それと、ギルドに戻ったらあの吸血(コウモリ)の疑惑についても、しっかり調査してちょうだい。これ以上邪魔されたら、たまったものじゃないもの」


「ああ、そうだぜ! わかってんだろうな?! もし誤魔化したりしやがったら、クラン総出でギルド本部に抗議を入れるからな!!」


 リュミナスを睨みつけたマザマージは、臨時収入もあることだしうまいもんでも食いに行くかと二人の腰に手を回し、ピクニックにでも来ているのかと問いたくなるほど軽い足取りで進んで行く。


 アリスとメルシーが怒り心頭といった様子で何かを言おうとするが、俺が手で制すと不満そうにしつつもぐっと堪えてくれた。


 なんだかんだで上位種との戦闘後だ、好き勝手していたあいつらと違って、他の面々はそれなりに疲弊している。


 ダンジョンを出るまでは、好きにさせておくべきだろう。


 リュミナスやカイエンも同じことを考えているからこそ、何一つ反論しないんだろうしな。


 こうしてS級ダンジョンでの騒動に一区切りつけた俺たちは、随分と久しぶりに感じるブレルへと帰還を果たしたのだった―――。



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