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8日目 インタビュー

「――本日はよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 目が覚めると、会話が聞こえてきた。

 2日連続で文明の香り。人間が近くにいる。素晴らしい。


「まずは生い立ちからお聞かせください。●●さんは、西日本のご出身ですよね?」


「そうですね。西日本とは言っても、大阪などではなく。片田舎で育ちました」


 白を基調に明るくまとめられた貸会議室のようなところで、ふたりの男が話を始めた。もうひとり、カメラマンがいて、片方の人物が空中で手を上下する様子をばっちり写真に収めている。


「幼い頃から、お話を考えたりされていたのでしょうか」


「いえ、まったくそんなことはなく。もっぱら読む方専門でした」


 カメラで撮られていない方の人物の前の机にはレコーダーが置かれており、開いたノートにメモをしながら会話を進行しているようだ。


「その頃読まれたもので、印象に残っている作品はありますか?」


「そうですね……? んー……」


 俺に体の感覚はない。この会議室にいる生物に転生したとかではなさそう。レコーダーとかノートとかは遠目に見えてるから、これも違う。

 だとしたら、「会議室」自体か、はたまた――


 ◇ ◇ ◇


 しばらく、ふたりの会話を聞く。

 インタビューをされている側の人はどうやら作家で、このたび、なんか有名な文学賞を受賞したそうだ。これまで全然売れてなかったのに、取って以来は執筆依頼が殺到して忙しいらしい。よかったね。


「――いやー、面白い話を聞かせていただきました、ありがとうございました」


「こんなに盛り上がってしまうとは思ってませんでしたよ。こちらこそ」


 こうして、インタビューが終わる。男がICレコーダーに手をかけ、そして――


 俺の意識は、途絶える。




「――どうぞよろしくお願いします」


「はい」


「それでは――」


 次に意識が戻った時には、別のインタビューが始まっていた。今度は無愛想な老人に対して、女性の記者が質問を投げかけている。

 レコーダーを操作した瞬間に意識が消えたということは、レコーダーに転生した線もなくはないんだけど、それだったら視点がおかしい。


 だとするともう、残る選択肢はひとつ。

 今日の俺は、「インタビュー」そのものに転生しているようだ。概念。非実体。

 神をぶん殴るどころか、何か干渉することもできやしなさそうだ。


 『天界新聞』の連載・『天声神語』の取材とか、あったりしない? しないよなあ……

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