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72日目 地下書庫の電動本棚

 薄暗い空間で目が覚めた。

 今日の体はだいぶ大きく、がっしりしている感じがある。体の各所にほぼ均等に荷重がかかっているけれど、重くて死ぬという感じではなく、むしろ心地よい重みだ。これがないとふわふわ落ち着かないような気がする。


 目の前には、本がいくつか見える。「禁帯出」の赤いステッカーが貼られている。

 薄暗かったけれど、タイトルくらいは読み取れた。『世界の織物大事典』『万国料理事典』。分厚く、やや古めかしい本が並んでいる。


 人の気配はない。

 温度は一定に保たれていて、暑くも寒くもない。湿気もなく、非常に快適だ。


 ここまでくれば、だいたいわかる。

 今日の俺は――図書館の、本棚になっているようだ。



 薄暗い空間で何時間か過ごしていると、変化が訪れた。

 こつ、こつ、と、足音がするのである。やがて電気がぱっとついて、足音はどんどん近付いてくる。

 来訪者が、現れた。こんな寂れた書庫に。


 俺の視線は固定されてしまっていて、そちらの様子は確認できないけれど。


「えっと……596だから……」


 女性の声が聞こえてきた。若い。大学生くらいだろうか?


「ここ、かな」


 俺の脇腹についたボタンが、ぽちっと押される。

 ビー、ビーとブザーが鳴り出す。


 俺を含めた本棚全体が、床の上を滑る。ずれる。

 ちょうど俺の視線の先に通路が生じ、上でまた照明がぱっと点く。


 そうか、どうりで近いと思ったら――俺、あれだったのか。地下書庫とかにある、電動の棚。

 ……ま。どのみち、こんな図体じゃ、神様のことをぶん殴ってやるのは難しそうだ。


 今日のところは、通路に入り込んできたこの女性のポニーテールの揺れ具合を堪能することにでもしよう。

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