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66日目 魔法の杖(王城宝物庫にて保管)

「じゃあボクはこれにする!」


 声と同時に、俺は握られた。身体は細長い棒状になっていて動かせない。

 俺の首のあたりをやわらかく傷一つない手が包み込むやいなや、何かあたたかい(・・・・・)ものが流れ込んでくる。体温が伝わってきたとかそんなレベルじゃない。もっと明確に、何か俺の知らない概念を帯びた氣が送り込まれ、俺は励起する。


 励起ってなんだと言いたいところなんだけど、励起しちゃったもんは仕方ない。送り込まれた謎のハンドパワーで、俺の身体はアゲアゲになってるわけだ。


「わ、わっ」


 手に持った俺を見て慌てるのは、魔法使いがよく被っているとんがり帽子を被った人物だ。小柄だしローブで体のシルエットが隠れているし声は高いしで、男なのか女なのかイマイチよくわからない。


「シャル!?」


 横合いで壁に掛かっている剣を見ていた男が、俺たちの方を振り向いて鋭い声を飛ばす。


 ――それもそのはず。アゲアゲになった俺の身体からは燐光がばちばちと飛び散り、薄暗かった石造りの部屋をほんの少し明るくしていた。

 緑。青。白。魔法使いちゃん(仮)を中心に、光量は強くなり、それに比例するように俺の体も熱くなっていき、そして――


「あっちだ! あっちの壁に撃て!!」


 男が指差し、「隠れて!」という別の声も聞こえ、辺りは舞台の上のように明るくなり――


「え、えい」


 握られた手から最後のきっかけが放り込まれ、俺が溜め込んだエネルギーは指向性を持って壁に飛んでいく。


 ドゴォン!


 土煙が上がり、晴れると――壁に開いた大穴から、平原と青空が見えるようになった。

 俺を握った魔法使いちゃんが、ぺたんとその場に座り込む。


「ごめん……ちょっと寝かせて……」


 そのまま横に倒れたかと思うと、日の光が漏れ差す埃っぽい部屋の中で、すうすうと眠り始めた。俺を抱えたまま倒れたから、俺の顔の前すぐが魔法使いちゃんの顔である。まつ毛長いし美人だな。それがどうやってあんな破壊を生んだのだろう。

 ……や、俺とあの光が関係していることは間違いないんだけど。


「……握ったときの余剰魔力だけで王城の壁をぶち抜く、か」


 壁を指し示した男と、「隠れて!」と指示を出した女が話を始める。 

 ってちょっと待て。魔力あんのかこの世界。いやなんとなくそんな気はしてたけど!


「余剰だけじゃないわよ、この杖、結構貪欲みたい」


 あーやっぱり! 俺、杖なんだな! 魔法の杖! いぇい!


「え?」


「考えてごらんなさいアレン。余剰だけだったら、シャルがぶっ倒れるわけがないでしょう」


「……そういえばそうだ」


「だから、これは切り札ね。倒れたシャルはあんたが責任持って守りなさい」


「任せとけ」


 俺はとんだ危険物だったようだ。なんだよ、握っただけで超高出力の魔法撃ってその後しばらく気を失う杖って。

 ……ま、あるもんはしかたない。そういうもんだろ。


「言ったわね? じゃあ王様への謝罪もよろしく~♪」


「ちょっ! おまっ! それは話が別だろ!」


「一抜けっ!」


「スカウト職だからって逃げるな! おいこら! エリス!」


 ……なかなか仲のよろしいパーティーだこと。

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