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65日目 ペットボトルで培養されるゾウリムシ

 水の中、だと思う。

 生物だ。無機物でも、電子の存在でもない、身体の感覚がある。


 ……その割には、周りの様子がよく見えないけれど。明るいか暗いかくらいはわかるんだけど、周囲の様子はまったく見えない。

 つーか広いし深いな、ここ。さっきから動き回っているけれど、水面にも岸にも底にも到達できる気がしない。まるで太平洋のど真ん中に放り出されたみたいだ。


 そう。動き回る。

 全身に生えた細かい毛を震わせて、なんとなく行きたいなと思った方へ動く。それが今日の俺らしい。……うーん?


 見えないってのは、たぶん、目がないのだろうと思う。あるいはとても視力が弱いか。無機物の時は無条件でバーチャルな目がついてくるけど、生物の時はその体にある目しか使えないのだ、俺は。


 目がない生き物で。全身に細かい毛が生えていて。

 相対的にすげー広い水の中にいる?

 ……うん。なんとなく読めてきたぞ。さては俺、微生物になってるな?


 そう思った瞬間、世界が揺れた。

 大洋だと思っていたものごと、俺は持ち上げられた。水は攪拌され、俺も目が回る。ぐわんぐわん。先ほどより明るくなって、そして。

 それだけかと思ったら、世界がひっくり返った。先ほどまでの上が下になり、下は上になる。わーお。微生物ってこんな暮らしをしてるのね。……っていうか、これ、俺は人間に飼われてるってことでいいのか?

 だってこれ、明らかに何かから何かに移す動きじゃん。……俺の体じゃ、移されたのか移されてないのかもわかんないけど。あ、でも、さっきより狭い気がする。移されたのかな?

 まだ、世界は揺れている。ぐわーんぐわーんと、ある程度一定のリズムで、10回ほど揺れる。そして――


 ふたたび、世界はひっくり返る。

 今度は分かった。俺は、落とされた。どこかに。微生物にとってはだいぶ高いところから、真っ逆さまに。

 ばしゃーんという音を聞きながら、先ほどより幾分明るい水の中で考える。


 えーと。

 俺は、たぶん、なんかしらの微生物だ。

 そんでもって、今、何かに小分けにされた後、この空間に落とされた。明るいってのは、単純に明るいのもそうだし、たぶん水が澄んでるってことだ。微生物の培養に使う水じゃなくて、もっときれいで、そう、魚とかでも住みよい水。


 つまり――

 俺は、餌らしい。


 そうやって結論を出した瞬間、俺の視界は暗くなり――なにかに、呑み込まれた。

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