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59日目 巨大かぼちゃ(ボート用)

 水の中に放り込まれたところで、目が覚めた。

 どばしゃーんと水しぶきが上がり、そして俺はぷかぷか浮く。痛みはない。

 ……にしても、この水しぶきの量、相当でかい何かなのでは?


 水は存外浅いらしい。俺の横には半袖半ズボンの男が立っている。膝から下が水に浸かっているくらい。

 なんだなんだ? ボート?


 ……そう思ったんだけど、にしては、男の様子がおかしい。

 ナイフを、持っているのだ。包丁というにはちょっと大きいくらいの、でも切れ味がよさそうにきらりんと光るナイフを。


「OK.」


 彼はそうひとこと呟くと――

 ずさんと、勢いよく、俺にナイフを突き立てた。


 痛――くは、ない。

 彼はそのまま俺を切り裂いていく。俺の水面から出ている部分に、格子状の深い切れ目を入れ、それを足がかりに俺の中身をえぐり取っていく。

 痛みを感じないのが不思議なくらい、乱暴に、さくさくと、俺の頭の上に深い穴が開く。


 そして――彼はその穴から、手袋をはめた手を突っ込んでくる。俺の中身が――なんとなく、一番大事に感じる部分が、彼にとっては邪魔らしい。どんどんむしり取られて、大きなポリ袋にしまわれていく。

 感覚としては「切り離されていく」感じだ。俺の意識は、水に浮かんだ塊にあるまま。


 しばらく作業を進めて、俺の中身がきれいさっぱり失われたころ――


「OK.」


 彼はまたこう呟いて、俺を川岸に近付けた。

 いや何がOKなんだよ、と考える間もなく――彼は俺の開口部の脇に両手をかけ、俺の中に片足を入れた。サンダル履きで、川の水に濡れた足を。そのままもう片足も入れ、しゃがみ込む。

 俺の中に、男はすっぽりと入ってしまった。入ってしまった状態でも、ぷかりぷかりと浮いている。


 左右に俺を揺らして、転覆する心配がないことを確認して――彼はもう一度呟いた。


「……OK.」


 ……いや、俺からするとOKじゃないよ。なんだこれ。


 ◇ ◇ ◇


 ここまでの状況を整理しよう。俺は、


・人が乗れるほど大きく、浮く物体

・くり抜かれたらボートみたいになった

・中心の方に大事な部分がある感覚


 である。……うーむ。工業製品だとしたらわざわざくり抜かないだろうしな。そもそもゴムボートとかでいいからそのままホームセンターとかで買って持ってこいって話だ。

 とすると――天然モノ?

 なんかバカでかくなる野菜とかで……外がそこそこ頑丈そうな……ウリ? ヒョウタン? カボチャ?

 候補は出せるけど、確証には至らない。


 悩んでいるまま男に牽かれていくと、川の中に人が増えてきた。あっちにもこっちにも人がいて、橙色の物体を削ったり、塗ったり、乗ったりしている。

 これは、もしかして。

 川岸を見る。ゲートがあった。 祭り会場によく設置されてて、なんたらフェスティバルって書いてあるようなアレだ。

 読むと――


「PUMPKIN REGATTA」


 ……なるほどね?

 どうやらここでは、カボチャでボートレースをするようだった。俺はボートにされるカボチャってワケ。


 ……いやそれはわからんよ。これだけ大きなものに転生できたんだから、神様の真上に出現したりしたらちょっとは痛い目に遭わせられたかもしれないものを……

 転生生活も、色々とままならないものだ。

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