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46日目 国際宇宙ステーション

 目が覚めたら、宙に浮かんでいた。

 黒い空には星がたくさん。そして、眼下には――大きな、青い蒼い星があった。地球である。


 動いている自覚はないけれど、地球の見えている部分は刻一刻と変わっていく。……これ、オーストラリアか。タスマニア島見えるまでわかんなかったわ。


 どうやら――今日の俺は、人工衛星か何かになったようだった。



『――こちらヒューストン。ISS、聞こえますか? オーバー』


 ぽやっと地球を見下ろし眼下の大地や雲の様子に思いを馳せていたら、いきなり言葉が聞こえてきたからびっくりした。まさか、音の伝わらない宇宙空間で話しかけられるとは思わないじゃん。

 ……ま、地上からの電波だったわけだけれど。英語なのに日本語みたいに意味がわかるから不思議。


「――こちらISS。感度良好。オーバー」


 地上に向けて叫べと命令を受けたので、叫ぶ。電波を使って叫ぶのってすごく変な感じがするけど、まあ、ビビビってやっとけばいい感じに送信ができるらしい。


『――まもなくディスカバリーが到着する。出迎えを頼むよ。オーバー』


「――ようやっとおでましか。任せとけ。オーバー」


 ディスカバリーって、確かスペースシャトルの名前だったような。

 んで、ISSって、「国際宇宙ステーション」の略だよな。


 ということはだ、つまり。

 今日の俺は、地上400km、人類の宇宙に対する前線基地――国際宇宙ステーションになっているらしい。

 これまでで一番高いところにはいるのだけれど、神様の頬をぶん殴ってやるにはまだまだ足りなさそうだ。ぐぬ。


 そうやって意識してみると、俺の中は温かく、空気があり、人が内壁にぶつかったり離れたりしている。表面は、太陽側がジリジリ熱く日陰側が激寒なのと比べれば、天国と地獄くらいの環境の差がある。

 ……いいなあ。中にいる奴らは。俺も宇宙食食べたいよ。



 そうこうしているうちに、遠くに宇宙船が見えた。真っ白な耐熱タイルが太陽の光に照らされてまばゆく光る。

 あれがさっき話に出てたスペースシャトルだな。


『――ディスカバリーよりママへ。当機から貴ステーションを視認した。ドッキング作業を開始する』


「――ISSより子猫ちゃん、了解」


『誰が子猫ちゃんだ』


「お前だよ」


『うるせえ、食料持って帰るぞ』


「ディスカバリーが持って帰って困るのはジョニーだろ」


『ソウデシタ……』


 雑談もしつつ、俺は姿勢を制御し、ディスカバリーとのドッキングシークエンスに入る。

 宇宙で衝突なんてしたら大事故だ。ちょっとずつ、ちょっとずつ、お互いの距離が縮まっていく。

 ……問題が、ひとつだけあった。

 ドッキング口、身体感覚として考えると、唇なんだよね、まんま。


 相手のディスカバリーも同じだとすると――お互い見合ったまま、ちょっとずつ口と口の距離が縮まっていくのは、ちょっと恥ずかしかった。


 ちゃんと無事にドッキングはできたけどな。

 それはそれ、これはこれ、だ。

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