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30日目 碁盤

 目が覚めたら、見覚えのある部屋にいた。


 ……マジ?

 そんなことある?


 見覚えのある天井。

 見覚えのある和室。


「えー、それでは。皆さま本日もお集まりいただきありがとうございます。第143回、囲碁同好会の活動を始めます」


 ……えええ。ガン萎えなんだけど。ま、その萎えを表出する手段もないんだけどね。そして神の野郎をぶん殴る手段もない。


 ぱちん、ぱちんと、俺の頭に石が置かれていく。いや、置かれる前から分かってたけど、これで確定だ。

 今日の俺は、碁盤になっている。

 それも――2週間くらい前に一度来た覚えのある、公民館の一室で。


 俺を挟んでふたりが正座して、黒石と白石を交互に打っている。

 19×19の格子の交点に、ぺちんぺちんと。「ふむ」「はー」「うーん」など独り言もありつつ、「お正月はどちらへ?」など雑談もしながら、対局はつつがなく進んでいく。


 座布団の時と違う点は、俺が盤面の様子を感知できる点だ。部屋の中を見回す視界とは別なんだけれど、なんというか、視える。どこに黒石があってどこに白石があるのか、はっきりと分かる。おじさんたちのお尻とか脚とかをひたすら観察するしかなかった前回よりは格段にいいんだけれど、問題点がひとつだけあって。

 俺が、囲碁、まったくもって素人ということだ。黒と白を交互に打つこと、オセロと違って交点に打つことしか知らん。


「ほーう、そう来ましたか」


 だから、そう言われたって、全然わからん!


 ◇ ◇ ◇


 結局、今日の俺が理解したことは、囲碁では4方向を囲まれた石は取られてしまうらしいことと、山辺さんのお孫さんが10歳になったことと、服部さんの奥様が入院されたことと、川下さんの俳句が市報で入選したことくらいだ。

 全然ルール分かんなかったから、人間だった頃だったらあくびを3回してから昼寝を始めてるであろう雑談にめちゃくちゃ耳を傾けてた。


 ……でも、この同好会は、もういいかな。

 どうせ何回も転生させるほどの縁を作るなら、美少女のところがよかったなあ…… 

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