26日目 サハラ砂漠
目が覚めたら、ジリジリとした陽光に照らされていた。
おととい、キャベツだった時と一緒だ。違うのは、その強さ。こないだがじんわり気持ちいい感じだったとするならば、今回はジリジリ身を焦がす感じだ。
早い話が――熱いし、暑い。
前回より南にいるんだろうか。それとも単に夏とか?
今日の体は、比較的平べったく、それが横たわっている感じだ。自分自身では動けないけれど、体のあちこちにくすぐったいような感覚がある。んー?
……目を開く。にしても――「見えそう」な感覚があるときでも、実際見てみる前に身体感覚に集中するようになった。無機物とかで「見える」のは本来じゃないからな。まずはもともとの感覚を十全に味わって、検討して、その上で目を開いてみて答え合わせをするようになってきた。これくらいしか娯楽がないんですよ。映画の日はよかったなあ。
俺の目に飛び込んできたのは3基のピラミッド。世界史の教科書で見たことあるぞ。確か、カフラー王、メンカウラー王、そしてクフ王、だったっけ?
にしても、随分小さいような?
……違うな。俺が大きくなってるだけか。あと、感覚で分かるんだけど、あの3つ、俺の上に乗ってる。三大ピラミッド、俺の上に乗ってる。人間で言うと指先にレゴブロックを乗せてるくらいの感じ。だいぶちっちゃい。
でもなー。あれ本物だよなー。
よーく見ると砂粒くらいの大きさの人とか車とかラクダとか動いてるし。質感がすごく本物っぽいし。あ、スフィンクスもいるじゃん。
本物のピラミッドがあんなに小さく見えて、それが上に乗ってる感じがして、そしてジリジリ陽光に照らされている。ここまで来ればもう分かる。
今日の俺は、世界最大の砂漠――サハラ砂漠になっている! これまでで最大じゃないか?
ま、動けないから、神様をぶん殴ることはできないんだけど。
◇ ◇ ◇
今日の視点はイチョウ方式だった。つまり、動かそうと思えば動ける。
まあ基本的には赤茶色の砂山がずーっと広がってるんだけれど、動き回っていればそれなりに見るべきものだってある。というか、そうやって気を紛らわさないと、暑くてかなわないのである。
やみくもに動き回ってもしかたない。試行錯誤するうち、くすぐったい感覚がするところを見に行けば何かが起きていることに気付いた。くすぐったいというのは、俺の表面の砂がかき混ぜられているところだ。集中すれば、どのようにかき混ぜられているのかまで分かる。
表面が無秩序にぐしゃぐしゃにされているところがあった。砂嵐だった。
人がいっぱい歩いているところがあった。観光地? だった。たぶん「砂漠の真ん中で泊まる」のが売りなのだろう、建物やテントが並んでいた。
砂じゃない何かを吸い出される感覚があった。黒い煙を立てて炎がぼうぼう燃えていた。油田だった。
ひとくちに砂漠っつっても、いろんなものがあるんだなあ。




