21日目 シュレディンガーの猫
目が覚めたら、猫になっていた。
吾輩は猫である。名前はたぶんない。というか知らない。わかんない。
……うん。満足した。
それで問題はですね、せっかく生物への転生っていう自由度爆上がりなのを引き当てたのに、俺がどこかに閉じ込められていることだ。こんなんじゃ神様のこと殴りに行けない! そこどいて!
昨日のホッカイロよりは窮屈じゃないけれど、生物を引き当てたからにはあちこち跳んだり跳ねたり、水飲んだり餌飲んだりしたいものである。こんな金属の箱に閉じ込められてたまるか。
「ニャー!! ニャオ!!!」
猫の体がぎりぎり入るくらいの狭い箱の中で、精一杯暴れる。
おーい! 俺をこっから出してくれ! なんでケージじゃなくて鉄の箱なんだよ! おかしいだろ!!
なぜか箱の上には小さな電球がついていて、かなり暗いけれど猫の視力なら中の様子は分かった。
鋼鉄の箱だ。
水も餌も、布きれすら入っていない。金庫のような鋼鉄の箱である。開口部は見当たらない。
そして――隅っこに、小さなガラス瓶が固定されていた。
ラベルはない。中には液体が入っていて、俺が暴れるとちゃぷちゃぷ揺れている。
「ニャー……」
もっと見ると、この瓶めがけて振り下ろされるように調整されたハンマーまである。
……ん? これは、もしかして。
そう思った瞬間、ハンマーが、動いた。
瓶が木っ端微塵である。えっ。
中の液体がこぼれ出る。アーモンドみたいなにおいがする。
ペロッ! これは……青酸カリ!
この液体、毒だ!
俺は死んだ。
と――次の瞬間、面白いことが起こった。
青酸カリに殺された俺とが、重なり合ったのだ。
具体的にどう「重なり合った」かは表現するのが難しいけれど、とにかく、半死半生の状態になっている。死んだときの記憶がある気がするし、まだ生きて歩いている気もする。喉渇いたし餌食べたい。
重なり合った俺は、気がついた。
閉所に閉じ込められた1匹の猫。箱の中に仕込まれた青酸カリ。そして、「生と死が重なり合った」状態。
これはもう間違いない。
今日の俺は、シュレディンガーの猫だ!!
……思考実験って聞いてたけど、実在したんだな。




