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15日目 公園のイチョウの木

 目が覚めたら、すげー背が高くなっていた。

 めっちゃ見晴らしがいい。10m? 20m? とにかくすごく高いところから、地面を見下ろしている。

 なんなら太陽も見下ろしている。地平線のすぐ上のところに赤い太陽が浮かんでいて、劇場の足元から照らすライトかって勢いで俺の体を照らしている。現在進行形で、体が温まっていくのを感じる。


 地面の様子は……俺の正面側――太陽が出てきている方だから、東側か――は広場になっていて、芝生が植えられているみたいだ。遊歩道みたいなところがあって、ベンチも置いてあって、人の姿は……あ、犬の散歩してるおばさんがいるな。すげー、柴犬があんなに小さく見える。


 周りを見回すと、視線の高さと同じくらいの高さの木が何本か生えていて。

 その真ん中にあたる位置に俺の視点があって。


 ……うん。これは確定だなあ。

 今日の俺は、どうやら、この公園の木になっている!

 神の野郎をぶん殴る夢を実現するのは、今日も難しそうだ。


 ◇ ◇ ◇


 さて。俺の周りの木を観察する。昨日は結局自分の姿が分からなかったからな。今日は見晴らしもいいし、突き止めたいところだ。

 周りの木の形は、どれも共通している。木全体を遠くから見ると、トランプのスペードのような形だ。一番下が一番広くて、てっぺんはしゅっとまとまっている。俺はこの木の名前に心当たりがあった。


 イチョウだ。

 秋になれば黄色く葉の色を変え、性別によってはニオイがキツい銀杏を撒き散らす、イチョウだ。漢字だと公孫樹とか鴨脚樹とか銀杏とかいっぱいバリエーションがあるんだよな。


 まさかここ一本だけ種類が違うとかそんなおしゃれなことはしていないだろう。今日の俺は、イチョウだった。身動きできないし、わかったところで何も意味ないんだけど。高さがあるから眺めがいいだけマシか。



 ……とはいえ、数時間が経ち公園が子連れの家族で賑わうようになった頃には、てっぺんからの眺めにもだいぶ飽きていた。そりゃそうだ。人間だった頃だって、展望台でこんな長時間過ごしたことない。眺めのいい場所は、たまに行くからいいものだ。丸一日見てたって飽きてしまうだけ。


 ……うーん。どうにかならんかなあ。

 せめて視点を動かs――動いた!?


 動いた。

 上下に。エレベーターのように。視点が動いた。なにこの機能。新発見。

 俺の視界に、俺の枝が、葉が、映る。やっぱりイチョウ独特の、あのY字みたいな葉っぱだ。

 どうやら俺の視点は幹の中を上下できるようで、てっぺんから地面まで自由に行き来できた。地中の根の中は無理っぽい。どういう仕組みだ??


 退屈が紛らわす手段を見つけた俺は、自分の体のあらゆるところを観察して時間を過ごした。

 ちっちゃい女の子が「おっきー!」って言って俺に抱き着いてきたときは、最高にかわいくてわくわくしてしまった。君も大きくなるんだよ。

 ――鳥に糞ぶっかけられたり、犬におしっこぶっかけられたり、テンションが下がることもあったけど。

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