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13日目 区民館の座布団

 目が覚めたら、押入れの中にいた。

 ふすまの隙間からうっすら光が差し込んでいて、俺が存在しているのが押入れの上段であることがわかる。ドラえもんがいつも寝ているポジションだ。


 ……んで。

 この押入れ、普通じゃない。

 何が普通じゃないって――入ってるのが、普通の布団ではないところだ。

 脇に目をやる。座椅子の座布団抜きみたいなやつが5個くらい重なっている。旅館によく置いてある、木のやつだ。

 で、その隣に俺がいて。体の感覚は平べったくて。上からは重さを感じる。

 まず間違いなく、座布団だろうなあ……


 今日も、神様をぶん殴ってやるのは難しそうだ。


 ◇ ◇ ◇


 ぜんぜん変わらない風景に、ここがどこかを考えるのも限界で退屈し始めたころ、動きがあった。

 ドアが開く音がした後、がやがやと何人かの足音が聞こえる。


「おつかれさまですー」


「服部先生、お疲れ様です! これだけを楽しみに毎日生きてるってもんです」


 一番はっきり聞こえるのは、初老くらいの男性の声がふたつ。それ以外にも話をしている人の声が聞こえる。


「またまた大げさだなあ、儲かってるって聞いてるのに」


「それとこれとは話が別です。今日こそは先生を唸らせたいものですよ」


「ははは、楽しみにしてますよ」


 何かの同好会みたいな、ゆるゆると楽しめばいいんだよ、みたいな空気を感じる。

 はーいじゃあ今月の部屋代集金しちゃいまーすって声も聞こえてくるし。

 とするとここは、区民館的なそういう施設なのかね。


「山辺さんがね……」


「うちの奥さんが……」


 男の声が全部で10くらい。女性はいないっぽい。

 ふたりが近付いてきて襖を開けた。やっぱり初老の男性だ。いかにも趣味を楽しむ余裕がありそうな感じ。

 それぞれ座布団と座椅子を持っていき、ローテーブルを広げる。もちろん俺も床に放り出される。「運ばれる」感覚にもいい加減慣れてきた。


 ちらっと見えたんだけど、机の上に碁盤だか将棋盤だか―― 


「それでは、第142回ですかね、囲碁同好会の活動を始めます。よろしくお願いします」


 あっ、やっぱり。おじさんの下敷きになりながら、リーダーっぽい人の話を聞く。

 挨拶が終わったら、さっそく碁石を打つ音と考え込むうなり声とが響き始める。

 座布団の俺から、碁盤の様子が見えるはずもない。色んなおじさんの足を保護してやりながら、人間って人によって骨格とか筋肉の付き方が全然違うんだなということを学んだ。


 ……今日ばかりは、日替わりでよかったなと思う。

 こんな転生生活がずっと続くのは、ちょっと耐えられないもん。

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